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血液から見える健康

-第23回 インスリン抗体-HbA1cの他にもある、糖尿病の検査

インスリン自己抗体とインスリン抗体

今回は、「インスリン抗体」の検査について見ていきたいと思います。
インスリン注射で治療をしている患者さんは、思わぬ高血糖や低血糖が起きることがありますが、その原因にインスリン抗体があります。インスリン抗体とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンに対して、体内の免疫システムが反応して産生される抗体のことをいいます。

ヒトの体には、ウイルスや細菌、花粉などが体内に侵入したとき、これらを自分の体内の物質ではない異物として認識して排除する、免疫システムがあります。これらの異物を「抗原」、そして異物から体を守るために産生されるタンパク質を「抗体」といいます。

ご存知のように、インスリンは元々体内に存在するものです。
ですから、通常はインスリンを異物として認識することはないのですが、何らかの原因により体内のインスリンが異物として認識されてしまい、抗体が産生されることがあります。
これを、自己のインスリンに対して産生される抗体という意味で、「インスリン自己抗体(内因性のインスリン抗体)」といいます。
インスリン自己抗体が体内で大量に産生されると、低血糖症状に陥ります。この状態を「インスリン自己免疫症候群」といいます。インスリン自己抗体は、1型糖尿病の発症初期に高頻度に検出されることから、1型糖尿病の予知マーカーとして用いられます。

そしてもうひとつ、(自己ではない)体外のインスリン、つまりインスリン製剤が原因で同様のことが起きることもあります。これを「インスリン抗体(外因性のインスリン抗体)」といいます。
インスリン抗体が産生されると、血糖値が非常に不安定で、血糖値が高いままで下がらなかったり、思わぬ低血糖になったり、注射部位に発赤が出たりと、インスリン製剤を使用している糖尿病患者さんにとって、血糖コントロールやインスリン投与量の調整が難しくなります。



インスリン製剤は、以前は動物由来のものが使用されていたためインスリン抗体の産生が高頻度に起きていましたが、ヒト由来のものが開発されてからはインスリン抗体の産生頻度は減少しました。また近年では、インスリン抗体は産生されるものの、その量は少なく血糖コントロールやインスリン投与量にほとんど影響しないインスリン製剤も開発されています。

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