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糖尿病神経障害を回避せよ!

-第1回 糖尿病神経障害って?

糖尿病神経障害って、どんなもの?

糖尿病の神経障害にはさまざまな症状があります。
両側の手足に感覚異常(しびれなど)が現れる多発神経障害、内臓の働きや心臓・血圧に異常が現れる自律神経障害、そして一本の神経が侵されて異常が現れる単神経障害、この3つに分類されます。

神経障害の原因が糖尿病以外に考えられない場合、一般的に多発神経障害のことを糖尿病神経障害と呼んでいます。それでは、それぞれを詳しく見ていきましょう。

●多発神経障害
糖尿病神経障害の中で最も多いのは、症状が多方面から出現する遠位性の多発神経障害です。
これは、感覚神経や運動神経の障害によって起こるとされています。手足の末端、靴下や手袋で覆われる部分の痛みやしびれ、足の裏に薄紙が貼りついたような感じや、砂利の上を歩いているような感じと表現される、感覚の鈍麻から始まります。

それが徐々に足先から膝へ、手先から肘へと、からだの中心に向かって広がっていきます。特に足先は神経の末端部分ですので、これらの症状がより早期に現れます。また左右対称に両側の足先から症状が出るのが特徴です。

●自律神経障害
自律神経は内臓の働きや、発汗による体温調節、血圧の維持など人間が生きるために必要な機能を調節している神経です。

自律神経に障害が起きると、心臓や血圧に異常が現れます。つまり、立ちくらみを起こしたり、脈が速くなったり、逆に運動したり緊張しても脈拍が変化しない等の異常が出てくるのです。また消化器症状として、下痢や便秘を繰り返したりすることもあります。

他には、上半身だけに汗をかいたり、逆に汗をかかなかったりといった発汗の異常が認められることもあります。また膀胱が収縮しなくなり、お腹がパンパンになっても尿意を感じずに排尿できない排尿障害や、勃起障害もあります。

●単神経障害
神経に栄養を供給している細い血管が、小さな血栓で詰まり神経に血液が通わなくなることで、その部分にのみ現れる障害です。顔面神経麻痺や、急に物が二重に見えたりする動眼神経麻痺、急に片側の難聴が生じる聴神経麻痺などが有名です。

糖尿病神経障害は、網膜症や腎症とは異なり、その症状はさまざまで個人差が大きいのが特徴です。そしてこの糖尿病神経障害は、進行性であり、治療も困難なことから、大きな問題となっています。

自覚症状がなく進行していくと言われる糖尿病ですが、実は、糖尿病3大合併症のうち神経障害だけは、初期のうちから手や足のしびれという症状が現れます。

軽症のうちに血糖コントロールをすれば症状を改善することができますが、手足がしびれる程度だと日常生活に大きな障害がないためか、放置されてしまいがちです。その結果悪化して、ケガに気づかず重症化したり、狭心症や心筋梗塞になっても、本来感じるはずの胸痛を感じることがないため、治療が遅れて深刻な状態に陥ることも多いのです。

次回は、糖尿病神経障害が進行してしまった場合、どんな症状が現れるのか、進行例や検査方法などについて見ていきたいと思います。

 

著者プロフィール:中井 望(医師)
名古屋市出身。1999年愛知医科大学医学部卒業。2008年東京慈恵会医科大学大学院博士課程修了。医学博士。横浜市立市民病院での研修後、東京慈恵会医科大学附属病院勤務を経て、2005年より東京慈恵会医科大学附属青戸病院 糖尿病・代謝・内分泌内科に勤務。また2009年より東京医薬品臨床開発ビル診療所にて治験担当医師として勤務。専門分野は糖尿病。

 

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