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血液から見える健康

-第12回 ケトン体-他にもある糖尿病の検査

尿中ケトン体検査でわかること

尿中ケトン体検査は、前回のコラムで説明した尿糖検査のように、尿定性試験紙を用いるもので、自分でも簡単に検査することができます。尿定性試験紙を尿に浸すと、試薬部分の色が数段階に変わり、その変化の程度でケトン体が多いか少ないかを調べることができます。

試薬部分の色の変化から、(-)、(+)、(2+)、(3+)といった具合に結果が判定でき、(-)は尿中ケトン体陰性(検出されず)、(+)~(3+)は尿中ケトン体陽性となります。
*尿定性試験紙によっては(4+)まで判定できるものもあります。

尿中ケトン体は、糖尿病でない健康成人の尿中にもわずかな量が出てくるものなのですが、通常の尿中ケトン体検査(尿定性試験紙)では検出されません。

尿定性試験紙には、各段階別に尿中ケトン体の濃度が決められていますが、これは半定量値といって「このような色でこれくらいの濃度と推定される」というだいたいの目安という意味ですので、精密な生化学分析機で測定した場合の正確な定量値(例:10mg/dL)とは異なります。

では、尿定性試験紙の留意点について、もう少し見ていきましょう。

1. 採尿後3時間以内に
アセト酢酸とアセトンは、採尿後長時間放置すると揮発してしまうので、採尿後3時間以内に検査する必要があります。

2. ケトン体とは関係のない薬剤に反応する、偽陽性
尿定性試験紙の測定原理は化学反応のため、ケトン体とは関係のない薬剤に反応してしまい、本当は陰性なのに陽性の結果となる場合(偽陽性)があります。

3. 糖尿病性ケトアシドーシスによる、偽陰性
尿定性試験紙は、測定原理上、アセト酢酸は鋭敏に検出しますが3-ヒドロキシ酪酸は検出できません。そのため、糖尿病性ケトアシドーシスのような、3-ヒドロキシ酪酸が尿中に多く出され、アセト酢酸の出される量はほとんど変わらない場合、尿中ケトン体を検出できず、本当は陽性なのに陰性の結果となる場合(偽陰性)があります。


ケトン体の検査は、一般的に血中ケトン体検査より尿中ケトン体検査がよく行われ、尿中ケトン体検査が陰性であれば、血糖コントロールの管理状態は問題ないと考えられます。しかし、血糖コントロール不良などによる糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合は、尿検査だけでなく血液検査も行い、より詳細に調べる必要があります。

 

 

 

著者プロフィール:堀 行雄(臨床検査技師)
2000年インクロムの提携医療機関に入職して以来、臨床検査室で忙しく検体検査をする日々。年間およそ5000人分の血液を分析。

 

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