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糖尿病の治療薬

-第10回 インスリン療法-その5

インスリン注射剤の代表的な投与パターン

次に、インスリン療法の実際の例を見ていきましょう。

インスリン製剤の投与パターンはさまざまで、人それぞれに最も適した回数や製剤の組み合わせを選択することができます(第7回コラム参照)。

インスリン製剤(注射剤)の代表的なパターン

  1. インスリン1回注射の例
    (1) 持効型溶解インスリンアナログ製剤を、1日1回就寝前に注射します。主に経口糖尿病薬を併用している2型糖尿病の方(特にインスリン注射がしっかり守られない方や高齢者)に適応されます。
    持効型溶解インスリンアナログ製剤にて基礎分泌を底上げし、経口糖尿病薬で追加分泌を補うといった組み合わせの療法です(a)。

    (2) 2型糖尿病の方において、中間型ヒトインスリン製剤または中間型インスリンアナログ製剤を1日1回朝食前に注射するパターンもあります(b)。

  2. インスリン2回注射の例
    混合型インスリン製剤(c)または混合型(二相性)インスリンアナログ製剤(d)を、1日2回朝食前および夕食前に注射します。1日の規則正しい食生活が可能な2型糖尿病の方に適応されます。

  3. インスリン3回注射の例
    (1) 速効型インスリン製剤(e)または超速効型インスリンアナログ製剤(f)を、1日3回毎食後に注射します。SU薬二次無効例(第2回コラム参照)の2型糖尿病の方に適応されます。

    (2) 混合型(二相性)インスリンアナログ製剤(g)を1日2回朝食前および夕食前に注射し、さらに昼食前に1日1回超速効型インスリンアナログ製剤を注射します。
    インスリン2回注射では血糖コントロールができない2型糖尿病の方に適応されます。

  4. インスリン4回注射の例
    速効型インスリン製剤(h)または超速効型インスリンアナログ製剤(i)を1日3回毎食後に注射するのに加えて、持効型溶解インスリンアナログ製剤を1日1回就寝前に注射します。主に基礎分泌および追加分泌がない1型糖尿病の方に適応されます。
    また、基礎分泌能が低下した2型糖尿病の方や、妊娠時に血糖コントロールが悪い場合や大きなけがによる手術を受ける場合など厳格な血糖コントロールが必要な方にも適応されます。


これらの投与パターンは、ほんの一例に過ぎず、患者一人ひとりに適したさまざまな投与のパターンが存在します。繰り返しになりますが、この投与パターンを決める上で、前ページの血糖自己測定の結果は非常に重要なのです。毎回決められた測定回数で、ありのままの測定値を正確に記録し、その結果を持って主治医と相談し、最も適したインスリンの注射回数や製剤の組み合わせを見つけてください。

以上、今回は、血糖自己測定の重要性とインスリン治療の実際の例を説明していきました。次回は、インスリン治療で問題となる副作用である低血糖症状について、詳しく説明していき、インスリン療法の最終回として締めくくりたいと思います。

 

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

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