ログインするとすべての記事が読めます

糖尿病・よもやま話

-第6回 妊娠がきっかけで糖尿病に?

妊娠中の糖尿病の治療法は?

では、治療はどのように行われるのでしょうか。
通常の糖尿病の場合であれば、食事療法でエネルギー量(カロリー)を抑えることや、同じエネルギー量でも、糖質の少ないものを食べるように指導されます。しかしながら、胎児の発育に一番重要な栄養素はブドウ糖です。

血糖は、低くても高くても胎児に悪影響を与えることになります。これは血糖に限らず、甲状腺ホルモンなどのホルモンにも言えることですが、低ければいいというものではありません。
そのため、妊娠中の母体の血糖コントロール目標の基準は、非妊娠時より厳格な数字が決められています。この基準を守ることによって、胎児の正常な発育を守ることができるのです。

血糖コントロールには、厳しい食事療法やインスリン注射が使われます。

まずは食事療法。食事療法では、胎児の健全な発育に必要なエネルギー量と、適切な栄養素の配分が重要なカギとなります。
食事のエネルギー量は、非妊娠時に比べると少し多めに設定します。その人の体重などを考え、妊娠時期により150~600Kcalを付加することとなります。また、食事摂取時間も重要な因子ですから、規則正しい生活習慣を心がけることが大切です。

こうした食事療法で血糖コントロールがうまくいかないときは、インスリン注射に変更してコントロールするわけです。これは糖尿病合併妊娠のケースであっても同様で、非妊娠時には食事療法だけでコントロールできていた人や、経口剤を使用していた人でも同じです。
インスリンは、母体にも胎児にも悪影響を及ぼすことがほとんどありませんので、治療に大変有用です。しかし、母体のホルモンバランスの関係から、通常よりもインスリン分泌量が多くなることがよく認められますので、こうした点もチェックします。

そしてもうひとつ忘れてはならないのが、出産後に糖尿病がどうなるのかです。
妊娠糖尿病の女性の多くは、出産後には正常に戻りますが、実に30%近くの人が出産後も糖尿病や耐糖能異常を示すことがあります。
ですから出産後も定期的に検査を受けることはとても大切です。出産後も変わらず高血糖の状態なのを知らずに放置していると、将来さまざまな合併症が発症するかもしれません。次の妊娠を考えている人ならなおさらです。

いずれにしても、妊娠中の糖尿病の治療には、産科・内科(糖尿病・腎臓専門医)・眼科・小児科医、栄養士、糖尿病療養指導士・助産婦などがチームを組んであたります。
たとえ妊娠糖尿病になってしまっても、血糖コントロールを厳格に行うことで何か異常が現れても早期に発見できますので、母体・胎児の安全や正常分娩が確立されています。
ですから妊娠がわかったら、早いうちに糖尿病内科も受診して安心して出産に臨んでいただきたいものです。
 

著者プロフィール:関谷 正志(医師)
1980年関西医学大学 医学部卒業。1998年より株式会社互恵会 大阪回生病院 内分泌代謝内科に勤務、2005年同 部長に就任。専門領域は内科、糖尿病。日本糖尿病学会、日本内科学会に所属。

 

前へ 1 2

教えて!ドクター

「健康コラム」をもっと見る

新着健康コラム

「新着健康コラム」をもっと見る