ログインするとすべての記事が読めます

糖尿病・よもやま話

-第2回 糖尿病は、血管の病気?

「去年もこのくらいの血糖値オーバーだったから、大丈夫」は要注意

いずれの場合も、冒頭に述べたように、血管を流れる血液が高血糖なために血管壁が傷み、正常の血流が保てなくなるために起こるものです。

眼の網膜、腎臓の糸球体、神経細胞の周囲は毛細血管が多く血液が豊富に流れていますので、高血糖の悪影響を受けやすいところですから、こうしたさまざまな症状が生じるのです。

けれども必要以上に恐れることはありません。こういった怖い合併症も、血糖コントロールを改善することにより、高血糖をなくすことができれば症状の進行を抑えられます。また、最近は検査方法も進歩してきていますから、初期の軽い症状のうちに発見することも可能となって、早期に治療を始めることができます。

ところで、皆さんは企業の健診や市民健診で、要再検査と言われたのに病院へ行かなかったという経験はありませんか?

私は産業医として、毎年とある企業の健診を受け持っているのですが、「要再検査」と診断した人の半数程度しか医療機関へ再検査に行かず、次の年の健診日を迎えているのです。

糖尿病は、はじめのうちは特に痛みも不快な症状もないため、「基準値より少しだけ高い程度だから、たぶん平気」と高をくくってしまうのかもしれませんね。

たとえば、これが標準体重より1kg程オーバーしているという話だったら「たぶん平気」で済ませてもいいかもしれません。少しだけオーバーしたその体重のままで何年いても、洋服のサイズは同じですから買い替える必要もなく、見た目もそれほど太っていないでしょうから、特に支障はないでしょう。

でも血糖値の場合は違います。たとえ「基準値より少しオーバーしただけ」でも高血糖は高血糖です。放置した期間に比例して、高血糖が血管を傷つけ続けていると想像してみてください。体重の少しオーバーとは同列に考えられないと思いませんか?

また「去年の結果と数値が大幅に変わっていないから、たぶん大丈夫だ」と思わせてしまうのも糖尿病の厄介なところです。高血糖の状態のまま何年か放置していても、痛みもなく生活に支障もないため「(去年もこの程度でなんでもなかったし)この数値のうちは大丈夫だろう」と勘違いされてしまうのですね。

いずれにしても、糖尿病になってしまったら治療による厳格な血糖コントロールが重要です。あなたの血管をこれ以上高血糖が傷つけないように守り、また合併症から身を守るためにも、再検査を指摘されたら後回しにせずに病院へ行きましょう。そして、医師の指導を受けて血糖コントロールをしましょう。
 

著者プロフィール:関谷 正志(医師)
1980年関西医学大学 医学部卒業。1998年より株式会社互恵会 大阪回生病院 内分泌代謝内科に勤務、2005年同 部長に就任。専門領域は内科、糖尿病。日本糖尿病学会、日本内科学会に所属。

 

前へ 1 2

教えて!ドクター

「健康コラム」をもっと見る

新着健康コラム

「新着健康コラム」をもっと見る