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糖尿病と治験

-第2回 次世代糖尿病薬[GLP-1受容体作動薬]

GLP-1受容体作動薬-エクセナチドとリラグルチド

GLP-1受容体作動薬のうち、薬剤として開発が進んでいる代表的なものは、エクセナチドとリラグルチドです。

エクセナチドは、体内にあるGLP-1とアミノ酸配列が50%程度異なっていて、DPP-4の分解作用を受けません。

このエクセナチドは米国では2005年4月に承認されていて、バイエッタという商品名で販売されていますし、このほかにも幾つかの製薬企業で開発が進んでいます。
エクセナチドは、アメリカドクトカゲの唾液に含まれるExendin-4(エキセンディン・フォー)というGLP-1様の物質として合成されたペプチド(たんぱく質)です。

日本でもよく用いられる二相性インスリン(速効型30%)とエクセナチドを比較した臨床試験(治験)では、52週でほぼ同等のHbA1c降下作用を発揮しました。
また、体重の減少効果も認められ、同試験の被験者の体重(平均84.4kg)が、二相性インスリンを投与したグループでは平均2.9kgの体重増加、エクセナチドのグループでは平均2.5kgの体重減少となりました。

そしてもう一方のリラグルチドは、体内にあるGLP-1とアミノ酸配列はよく似ていますが脂肪酸が付加されていて、やはりDPP-4によるGLP-1の分解作用を受けにくくなっています。


このリラグルチドは、β細胞の復活作用についても臨床試験(治験)で好結果を出したことで、注目されています。
試験の方法は、まず2型糖尿病の患者さん165人を4つのグループに分け、グループAにはプラセボ(薬効成分の無い偽薬。薬だと思い込むことによって何らかの改善がみられる場合との比較)、グループB・C・Dにはそれぞれ用量を変えてリラグルチドを投与し、その結果を比較するというものです。

その結果、1.25mg/日を投与したグループで、β細胞機能の指標となるHOMA-β指数が14週間の投与で改善し、β細胞の最大分泌能も増加するという結果が得られました。

このように高い評価を受けるGLP-1受容体作動薬ですが、実は欠点もあります。一番の問題は副作用です。GLP-1受容体作動薬を投与すると、吐き気・嘔吐や消化器障害が起こります。吐き気は50%以上、下痢は10%前後の人に見られると報告されています。

また、GLP-1受容体作動薬はインスリン分泌促進薬である以上、患者さんのインスリン分泌力がある時点で使わなければなりません。つまり、インスリン分泌力のない1型糖尿病の患者さんには使うことができないということです。

また、注射薬であるために従来の経口薬を差し置いて使うことも難しく、当面は経口薬だけでは十分に血糖コントロールが出来ない人が対象になると考えられます。
特にインスリン注射による治療が受け入れられにくい日本では、一般の臨床で普及する可能性は錠剤であるDPP-4阻害薬と比較して低いことが予想されます。
次回は、そのDPP-4阻害薬について解説します。

 

著者プロフィール:井上 聡(医師)
1992年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、大手前病院、市立豊中病院を経て、2007年より医療法人平心会 OCROMクリニックに勤務。専門分野は消化器内科。

 

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