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糖尿病と治験

-第1回 次世代糖尿病薬

まったく新しい糖尿病治療薬、インクレチン薬とは?

飽食、運動不足、肥満、高齢化社会などにより糖尿病およびその予備軍は2,000万人を超えるといわれ、問題視されています。
糖尿病の治療法として、一般的な食事療法や運動療法はある程度確立されています。
また、薬物治療についても多くの薬剤が開発され、これまでに大変進歩してきました。

しかし、その一方で糖尿病は病因や病態が人によって非常に多様で複雑なため、それぞれの病態に応じて現在使用できる薬剤を駆使しても糖尿病のコントロールが決して満足のいく状態ではない場合が多々あり、糖尿病治療のさらなる開発が強く求められています。

それでは今、どのような糖尿病の新薬が開発されているのでしょうか。

近く日本の臨床現場に“インクレチン薬”である「GLP-1受容体作動薬」と「DPP-4阻害薬」が登場すると思われます。
特に日本人の2型糖尿病にとって大きな効果を現すと言われており、糖尿病治療は今、大きなパラダイムシフトを迎えようとしています。

インクレチンとは、小腸から分泌される消化管ホルモン、つまり食べたものに含まれる炭水化物や脂肪に反応して腸管から血液中に分泌される数種類ある消化管ホルモンの総称です。

そのインクレチンとしては、GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)が知られています。
GLP-1はグルカゴンという、すい臓のランゲルハンス島α細胞から血液中に分泌され、血糖を高める働きのあるホルモンに構造がよく似た、ペプチド(たんぱく質)ホルモンです。

GLP-1の働きは、①上がった血糖値を下げようとするインスリンの分泌を促すこと、②グルカゴンの分泌を抑制することです。
それ以外にも、③胃腸の働きを遅くして胃腸内の食物の移動をゆっくりとさせる作用もあるので、ブドウ糖吸収のピークを低くしたり空腹になりにくくしたりするといった効果があります。
さらに、④脳に作用して食欲を抑制することから、減量効果もあります。
また、⑤インスリン分泌量を増やすだけでなく、インスリンを作るすい臓のβ細胞そのものを増やす作用があります。β細胞の再生と新生です。

このようにGLP-1には多彩な生理作用があることが知られています。

2型糖尿病は15年以上にわたって少しずつβ細胞を失っていく病気ですから、GLP-1でブレーキを掛けられれば理想的です。糖尿病患者にとってはありがたい働きを示す消化管ホルモンなのです。

GLP-1の作用の一つであるインスリン分泌を促進するという点で言えば、これまでに使用されているスルホニル尿素薬(SU薬)やグリニド薬と同じですが、決定的に異なるのは、GLP-1の作用が血糖に依存しているという点です。
つまり血糖値が高いときにだけインスリン分泌を促進し、血糖値が60mg/dL程度以下になると作用をしなくなる。すなわち、低血糖を起こしにくいということになり、糖尿病の薬として望ましい条件を備えているといえます。

 

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