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糖尿病と治験

-第3回 次世代糖尿病薬[DPP-4阻害薬]

錠剤だから使いやすい、DPP-4阻害薬

現在、国内で2型糖尿病患者に処方されている糖尿病薬には、スルホニル尿素薬(SU薬)、グリニド薬、ビグアナイド薬(BG薬)、チアゾリジン薬(TZD薬)、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬)があります。これらを患者さんの症状にあわせて、一種類もしくは数種類を組み合わせて処方されるわけですが、それぞれに一長一短があるといったところです。

前回のコラムで紹介したGLP-1受容体作動薬にも、長所と短所があります。低血糖を起こしにくく、体重減少効果があり、 β細胞の機能を復活させるという3つの革新的な効果がある代わりに、注射薬であることと、さらに高価であるという欠点がありました。その欠点を補う形で開発されている薬がDPP-4阻害薬です。

DPP-4阻害薬の最大の利点は、経口薬(錠剤)であることです。経口薬が注射薬に比べて利便性が高いのは当然です。特に、インスリン注射による治療が受け入れられにくい日本では、今後DPP-4阻害薬の普及する可能性はGLP-1受容体作動薬より高いと予想できます。

実際、GLP-1受容体作動薬を開発しようとする製薬企業は少数派で、多くはDPP-4阻害薬の開発をすすめています。

開発の話の前に、まずはDPP-4阻害薬の作用のメカニズムはどんなものか、少し説明しましょう。(詳しくは第1回参照)体内にあるGLP-1という消化管ホルモンは、DPP-4という酵素によって急速に分解されます。GLP-1には、上がった血糖値を下げようとするインスリンの分泌を促進したり、インスリンを作るすい臓のβ細胞そのものを増やしたりする作用がありますから、DPP-4によってGLP-1が分解されるということは血糖コントロールにとって好ましくありません。

そこで、このDPP-4が働かないようにする(阻害する)ことにより、GLP-1の作用を増強させようというのがDPP-4阻害薬というわけです。

DPP-4阻害薬には、すい臓のβ細胞でのインスリン分泌を促進して血糖値を下げる働きがあります。さらに、β細胞の機能復活が認められたという臨床試験(治験)の結果も発表されています。


これは、DPP-4阻害薬のひとつ「シタグリプチン」の臨床試験(治験)で認められた結果です。ランダム化二重盲検試験(※1)という方法で、既存の薬(メトホルミン)での血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者741人に対して行われ、1日に1回100mg服用するグループと200mg服用するグループの両方で24週後のHOMA-β指数(※2)がベースライン比で約13%増加するという結果が得られています。

 

※1 ランダム化二重盲検試験とは

治験薬とプラセボ(薬効成分の無い偽薬)が無作為に混ぜられ、被験者にも医者にもわからない状態で行う方法。こうすることで、被験者の「効果があるだろう」という思い込みだけでなく、医者の「この被験者には効果が現れるはず」といった先入観もなくなり、検査結果に影響が出るのを防ぎます。

 

※2 HOMA-β指数とは

インスリンの分泌機能を示す指標のひとつ。空腹時血糖値と空腹時のインスリン値をもとに割り出してインスリン分泌能力を推定します。

 

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