要注意!糖尿病予備軍
-第1回 耐糖能異常/境界型糖尿病って?
もしあなたが、境界型糖尿病だと判定されたら?
境界型糖尿病は糖尿病予備軍。予備軍なので「糖尿病の気がある程度」だと安心しないでください。
境界型糖尿病の人のうち、1/3の人は2型糖尿病になり、1/3は境界型のまま、1/3は正常値に戻るという報告があります。
また、JAMA(The Journal of the American Medical Association)という医学雑誌で、オランダの研究者が詳細な報告をしています。それによると、空腹時血糖値とブドウ糖負荷試験の両方で「境界型」だった女性の75%、男性の53%が8年間に2型糖尿病に進行したというのです。
さらに境界型の状態が長い間続くと、合併症を起こす可能性もあります。血糖値が200mg/dL以上だと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞の危険性が増加すると言われていますので注意が必要です。
ですから境界型糖尿病の人は、糖尿病と診断されないまでも、定期的に検査を受け、食事に加えて運動など、生活習慣を改善する必要があります。糖尿病へと進行させないよう、食事療法と運動療法を行い、糖尿病を予防しましょう。
食事療法や運動療法を中心とした生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合もあります。その場合は薬による治療で、糖尿病の発症を抑制することが期待できます。
病院があまり好きじゃない、仕事が忙しい……いろいろ理由があるでしょうが、ご自分の健康のことです。後回しにしないでください。
さて、話は変わりますが、私が診療で患者さんに「血糖値を測りましょう」と言うと、「食事をしてきたので次回にしてください」と返されることがあります。
食後に血糖値を測っては、本当にだめなのでしょうか?
答えは、だめじゃない、です。
今までで触れたように、空腹時血糖も食後血糖もそれぞれに測る価値があります。朝食を摂っていないのは、前日から絶食している状態です。つまり最も血糖値の低い状態です。
軽い糖尿病の場合、夕食後や寝る前に血糖値が高くても、一晩かけてブドウ糖を細胞内に取り込み、翌朝には何とか正常の血糖値にもって行くことが可能です。つまり、軽い糖尿病では、空腹時の血糖値は異常値を示さないのです。
ところがそのような人でも、食事をすると血糖値が異常に上がることがあります。同様に境界型糖尿病の人の場合も、食後の血糖値の上昇が強く、正常値に戻るのに時間がかかるため、異常、つまり病気を見つけることができます。
もちろん、採血の目的によって、望ましい採血の条件は変わってきますが、時には食後の採血も受けてみてはいかがでしょうか?
著者プロフィール:前川 佳敬(医師)
2000年島根医科大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、渡辺医学会桜橋渡辺病院勤務等を経て、2005年より医療法人平心会 大阪治験病院に勤務。専門分野は循環器内科。