要注意!糖尿病予備軍
-第5回 耐糖能異常 おさらい
耐糖能異常 ― おさらい1
耐糖能異常についてのこのコラムも今回が最終回です。そこで今回はこれまでを振り返って、簡単におさらいしてみたいと思います。
ではまず、言葉の意味から見てみましょう。
耐糖能
耐糖能とは、文字通り、糖に耐える能力を示した言葉です。
つまり、血液中の糖をいかに正常に戻すか、その力があるかということです。
耐糖能異常/境界型糖尿病/糖尿病予備軍
耐糖能異常とは、インスリンの分泌不足や作用不良などによって、血糖値の正常化機構が不良になった状態で、血糖値が正常ではないが糖尿病ではない、その中間の境界型糖尿病の状態です。一般的には糖尿病予備軍とも呼ばれています。
耐糖能異常、境界型糖尿病は糖尿病予備軍。予備軍なので「糖尿病の気がある程度」だと安心はできません。境界型糖尿病の人のうち、1/3の人は2型糖尿病になり、1/3は境界型のまま、1/3は正常値に戻るという報告があります。
経口75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)
耐糖能異常を調べるための検査です。
経口75gブドウ糖負荷試験(75gOGTT)は、空腹時に75gのブドウ糖を含んだジュースを飲んで、血液中の糖やインスリンの値を、時間を追って調べます。
空腹時血糖値が110mg/dL以上126mg/dL未満、かつ、ブドウ糖液を飲んだ2時間後の血糖値が140mg/dL以上200mg/dL未満の場合に、境界型糖尿病、つまり耐糖能異常であると判定されます。
次に、どのような人が特に気をつけた方がいいのかを考えてみましょう。
耐糖能異常というのは2型糖尿病の前段階ですから、2型糖尿病になりやすいのはどういう人なのかを考えるとよいでしょう。
家族に糖尿病のいる人は2型糖尿病の発症リスクが高いといわれています。関連する遺伝子は16以上報告され、これらは、ひとつひとつでは発症リスクは低いものの、組み合わされることでリスクが2~3倍にまで高まります。
2型糖尿病は、インスリンは出ていてもその量が十分でないことやインスリンの効きが悪くなることが原因で起こります。日本人は、他民族と比べてインスリン分泌の予備能が少なく、2型糖尿病になりやすい民族だと言われ、日本人の糖尿病患者の90%が2型糖尿病です。
このような遺伝子的背景に加えて、インスリンの効きが悪くなる原因としてあげられる肥満・運動不足・ストレスなどの現代の生活習慣が、糖尿病へと結びついています。
また、喫煙も糖尿病の発症に深く関与しています。
日本でされた研究では、男女全体で見てみると、糖尿病の発症が喫煙者は非喫煙者の約2.6倍、そして耐糖能異常の発症が喫煙者は非喫煙者の約1.3倍のリスクがあると発表されました。
配偶者が喫煙している女性は特に喫煙に気をつけてください。女性は、自身が喫煙者でも非喫煙者でも、配偶者が喫煙者の場合には、自身も配偶者も喫煙しない場合に比べて、耐糖能異常になりやすいということが明らかにされています。男性と比べて女性の方が、喫煙が耐糖能異常や糖尿病に悪い影響を及ぼすようです。