要注意!糖尿病予備軍
-第2回 耐糖能異常になりやすい人
喫煙は、耐糖能異常・糖尿病発症のリスクを高める
喫煙も糖尿病の発症に深く関与しています。最近、女性において受動喫煙は耐糖能異常を来たしやすいということが、岐阜大学の研究により明らかにされました。
この研究において、男女全体で見てみると、糖尿病の発症が喫煙者は非喫煙者の約2.6倍、そして耐糖能異常の発症が喫煙者は非喫煙者の約1.3倍のリスクがあると発表されました。
男性だけで見ると、糖尿病の発症が喫煙者は非喫煙者の約1.9倍、耐糖能異常の発症が喫煙者は非喫煙者の約1.2倍のリスクです。
女性の場合、糖尿病になるリスクは男性より高く、喫煙者は非喫煙者の約2.7倍。そして耐糖能異常に関しては、自身も配偶者もともに非喫煙者という場合に比べて、自身が非喫煙者で配偶者が喫煙する場合が約1.8倍、自身も配偶者も喫煙者という場合はリスクが約2.9倍にも上ります。
これらの結果から、これまでも言われているように喫煙が糖尿病の発症に関与していること、また、女性喫煙者あるいは非喫煙者の女性で配偶者が喫煙者の場合は、自身も配偶者も喫煙しない場合に比べて、耐糖能異常になりやすいということが明らかにされました。
さらに、非喫煙の女性で配偶者が喫煙者の場合、自身も配偶者も非喫煙者の場合と比較すると、すい臓のベータ細胞(インスリンを分泌する細胞)の機能が低いこともわかりました。
男性と比べて女性の方が、喫煙が耐糖能異常や糖尿病に悪い影響を及ぼすようです。女性の方々は気をつけてください。
さて、少し話は変わりますが、糖尿病というぐらいですから、読んで字のごとく尿に糖が混じっている病気というイメージがありませんか?では、尿に糖が混じっている状態での実際の血糖値はいくらぐらいなのでしょうか。
厳密には個人差があるのですが(腎機能などによって)、だいたい血液中の血糖値が150~160mg/dL以上だと尿検査で尿糖(+)という状態になります。空腹時で尿糖(+)だと既に糖尿病である可能性が高くなり、耐糖能異常だと食後1~2時間後で尿糖(+)になるということです。ですから、たとえ空腹時の尿検査で尿糖(-)だったとしても、油断は禁物です。
ただ、正常でも尿に糖が混じることがあります。それは、腎性糖尿というものです。腎性糖尿とは、耐糖能は正常ですが、妊娠により糸球体ろ過率の増加や尿細管の糖再吸収が減少して、腎臓の糖排泄閾(いき)値の低下が起こり、その結果尿に糖が混じります。妊婦で尿糖陽性者の中ではこのようなケースの頻度が最も高いのです。
腎性糖尿は、特に治療の必要はなく放置しても問題ありませんし、腎性糖尿のせいで糖尿病になるリスクが高いということもありません。ただ、その後、耐糖能異常や糖尿病になったときに「腎性糖尿だから」と見逃しかねませんので、注意は必要でしょう。
以上、耐糖能障害について、どういう人がなりやすいのか、おおまかに見てみました。知ることによって耐糖能異常・糖尿病の予防や治療に役立てていただきたいと思います。
著者プロフィール:前川 佳敬(医師)
2000年島根医科大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、渡辺医学会桜橋渡辺病院勤務等を経て、2005年より医療法人平心会 大阪治験病院に勤務。専門分野は循環器内科。