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要注意!糖尿病予備軍

-第3回 耐糖能異常の悪影響

食後高血糖にご用心

では、ここでIGTの診断方法の違いによる心血管系へのリスクについてお話しましょう。
 

第1回で、日本での判定基準で「境界型」と判定された人(いわゆる糖尿病予備軍)は、WHO(世界保健機構)の判定基準では、さらにIGTとIFGに分けられると説明しました。

IGTとは、空腹時血糖値はそれ程高いというわけではなくても、ブドウ糖負荷120分後、つまり食後2時間後に血糖値が上昇するタイプのことです。



欧州での大規模な疫学調査において、
●正常群
●空腹時血糖値のみでIFGと診断された群
●空腹時血糖値と糖負荷後2時間値を合わせてIGTと診断された群
●糖尿病群
という4つの群ごとに心血管系(虚血性心疾患と脳梗塞)における死亡の累積危険率をまとめた結果があります。

空腹時血糖値のみで診断したIFG群では、心血管疾患(虚血性心疾患と脳梗塞)による死亡の累積危険率は、観察期間中、正常群に近く、両者は区別できません。一方、負荷後2時間値を含めて診断したIGT群では、死亡の累積危険率は、正常群と糖尿病群の中間に位置していました。このことからも、負荷後2時間値が心血管死のリスクをよく反映することが分かります。

この調査は欧州での調査です。前回、人種によって少し違うということに触れましたが、では日本人の場合はどうでしょうか。

日本でも、舟形町研究で同様の結果が出ています。
空腹時血糖のみで診断したIFG群では正常群と死亡リスクに有意差が認められませんでしたが、負荷後2時間値を加味したIGT群では、心血管死のリスクは糖尿病群と正常群の中間に位置しています。このことから食後血糖高値が生命予後に関与する可能性が示唆されています。

これらの結果から、血管系障害を引き起こす危険因子として、食後高血糖が重要であることが推察されます。

近年の日本は高齢化社会となりました。それに伴い、60歳以上の高齢者でIGTが増加していると報告されています。

加齢による体組成の変化によってインスリンの効き具合が低下し、すい臓のβ細胞の疲弊によるインスリン初期分泌の遅延・低下が加わって、耐糖能も低下すると考えられています。また、インスリン分泌能が遺伝的に低い日本人にとって、ライフスタイルの欧米化がβ細胞の疲弊をより助長したとも考えられています。

高齢の方や食生活が乱れている方は、空腹時血糖のみならず食後の血糖に気をつけ、ときどき採血の検査を受けることを検討してみてはいかがでしょうか?

次回は、耐糖能障害の治療に関して簡単に触れてみたいと思います。

 

著者プロフィール:前川 佳敬(医師)
2000年島根医科大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、渡辺医学会桜橋渡辺病院勤務等を経て、2005年より医療法人平心会 大阪治験病院に勤務。専門分野は循環器内科。

 

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