[糖尿病対策] 体脂肪を減らす!筋トレのススメ
-第5回 筋トレ2週間で、血糖値が低下!
インスリン分泌が低下した糖尿病でも、筋トレなら糖をエネルギーに変換
筋トレは運動そのもの、すなわち筋肉の収縮によって直接的に血糖降下作用に関与していると考えられます。具体的に考えてみましょう。
筋肉を動かすとき、そのエネルギー源となる物質はATPと呼ばれています。ATPは筋肉内にある程度蓄えられていますので、運動を開始して2~3秒は筋肉内に蓄えられたATPをエネルギー源として筋収縮が可能です。
その後7秒ぐらいは、エネルギー貯蔵物質でやはり筋肉内にあるクレアチンリン酸からATPを産生します。
さらに運動を続けると33秒くらいで、筋肉内のグリコーゲン(エネルギーに変換されやすいブドウ糖がたくさんつながった構造の物質)を分解して、エネルギー源として使用します。
ここまでは、エネルギーの産生に酸素を必要としません。
その後も運動を継続すると、今度は徐々に有酸素エネルギー代謝により、脂肪を分解し大量のATPを産生するようになります。そして運動後の休息時には、身体は枯渇したグリコーゲンを再合成する必要があります。そのため血中の糖分を多量に筋肉内に取り込むことになります。しかも大変重要なことは、この過程にはインスリンを必要としないことです。
一般に細胞内に糖を取り込むには、インスリンを必要としますので、筋トレによって血中の糖分を多量に筋肉内に取り込むときにインスリンを必要としないということは、比較的進行したインスリンの分泌の低下した患者さんであっても、運動の効果が期待できるということを示しています。もちろん長期間の筋トレの継続で筋量が少しでも増えれば、さらに多量の糖の処理が可能となります。
糖尿病で運動療法に取り組んでいる皆さん、いかがでしょうか。
筋力トレーニングは、基本的に週3回だけ、むしろ筋肉に対する刺激を避けるため、毎日行う必要はありません。ウォーキングや水泳はしているけど、筋トレはしていなかったという方、あるいはまだ運動の習慣がないという方も、筋トレを始めてみませんか。
著者プロフィール:宇佐見 啓治(医師)
うさみ内科 院長。1955年8月郡山市生まれ。1982年福島県立医科大学を卒業後、同大学付属病院第二内科に入局。1988年より福島赤十字病院に約10年間勤務、1997年10月に郡山市にうさみ内科開業。
専門分野は、内科全般。消化器、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの成人病治療(特に運動療法)。所属学会は、日本内視鏡学会、日本肥満学会、日本糖尿病学会。日本内視鏡認定医、日本内科学会認定医、日本医師会スポーツ認定医、日本体育協会スポーツ認定医。
趣味はボディビル(2001年福島県ボディビルディング選手権大会4位入賞)、バトミントン、映画鑑賞、木版画、ひょうたんランプ作り、サックス演奏。