[糖尿病対策] 体脂肪を減らす!筋トレのススメ
-第1回 毎日1万歩。でもやせないのはなぜ?
有酸素運動、実はさほどカロリーを消費しない
一般に、減量のための運動としては歩行などの有酸素運動が有効とされています。
“短時間の運動ではエネルギー源として糖分しか使われないため、比較的長時間(20分以上)続けることにより脂肪を燃焼する”と言われています。
しかし、その一方で「毎日1万歩も歩いているのに体重が減らない」と言う人がいます。私のクリニックに来ている患者さんも、そうした悩みを持つ人は決して少なくありません。
実は、有酸素運動は、我々が思っているほどカロリーを消費しません。
これはどういうことかというと、例えば、フルマラソンを走るには約2,000Kcal必要とされています。体脂肪1kgは約7,000Kcalと言われていますので、フルマラソンを3回走っても脂肪1kgを減らせないということになります。
そして実際に走ってみると、確かに走った後に体重は減りますが、その大部分が汗として水分が減っただけで脂肪が減ったわけではないため、水分補給をすれば元に戻ってしまいます。
人間も含めて動物は運動に対して非常に効率良くできています。ごくわずかなカロリーで、たくさんの運動ができるようになっているのです。
これには人類の歴史が関係しています。現代は飽食の時代と呼ばれ、生活習慣病を防ぐため「食べ過ぎない」「飲み過ぎない」ように言われています。しかし人類の長い歴史を振り返るとその大部分が飢餓の時代です。実に400万年もの間、私たちの祖先は少ないカロリーでも生き延びる必要があったのです。
できるだけ効率の良いエネルギー産生のメカニズムが必要とされ、遠い昔、細胞内共生という形でミトコンドリアを細胞内に取り込みました。ミトコンドリアは、生物にとって危険な酸素を取り込んでATPというエネルギーを産生します。これによって、無酸素代謝のみに頼っていたときに比べ膨大なエネルギーを獲得することに成功したのです。
無酸素運動時に、1モルのグルコース(ブドウ糖)から作られるATPが2個なのに対して、ミトコンドリア内で行われる有酸素代謝ではなんと38個ものATPが産生されます。
これが、わずかな食事でも効率良く動いて生き延びるためにできた身体のメカニズムです。