糖尿病ドクターの新しい糖尿病治療薬話
-第3回 DPP-4阻害薬に期待されること
DPP-4阻害薬のさまざまな有益な作用
DPP-4阻害薬(GLP-1の作用を利用)には、さまざまな有益な作用があります。
① インスリン分泌増強作用
GLP-1が、すいβ細胞を刺激してインスリン分泌を増強します。これは前ページで説明したようにこれまでの薬剤(SU薬)とは違う経路での刺激です。
② すいβ細胞からのグルカゴン分泌を抑制
グルカゴンとは、血糖値を上昇させるホルモンです。GLP-1がグルカゴン分泌を抑えるというインスリンとは別のアプローチで血糖値を上げないように働きます。
③ すいβ細胞の保護・増殖作用
糖尿病治療によく用いられているSU薬には、すいβ細胞を刺激してインスリン分泌を促すため、長期にわたって使用すると、すいβ細胞を疲弊させてしまう問題点がありました。
それに対してDPP-4阻害薬の場合は疲弊が少ないと言われ、逆に(現在のところまだ十分な臨床検査のデータはないものの)、すいβ細胞を増殖させる作用があるとも言われています。
④ 食欲抑制作用・体重増加防止作用
これまでの薬剤では、血糖がコントロールできても体重はあまり減少せず、逆に増加することが多くみられました(第1回・第2回で取り上げたSGLT2阻害薬は除きます)。これに対してDPP-4阻害薬の場合は、血糖値を下げて、かつ、体重の増加も防止します。
⑤ 心血管の病気のリスクを低減させる
動脈硬化の予防、心筋保護に有益に働くと言われています。この効果についても、現在さまざまな臨床データが集められているところです。