糖尿病ドクターの新しい糖尿病治療薬話
-第3回 DPP-4阻害薬に期待されること
DPP-4阻害薬は、数ある糖尿病治療薬の中でよく使われている
DPP-4阻害薬は、糖尿病内服治療薬の中では比較的新しいタイプの薬です。一般に販売され約3年を経過し、最近では多くの糖尿病患者さんの治療に使われ、経口糖尿病治療薬の中で徐々に重要な位置を占めてきています。今回は、このDPP-4阻害薬に注目したいと思います。
糖尿病とは、インスリンというホルモンの作用不足から生じる病気です。主な原因のひとつ目が、すいβ細胞からのインスリン分泌障害、ふたつ目が、肝臓・筋肉など末梢組織におけるインスリン抵抗性(インスリンがうまく働かないこと)の増大です。
ひとつ目の原因であるインスリン分泌障害に対する治療には、これまではSU薬がよく用いられてきました。SU薬は、すいβ細胞を直接刺激してインスリン分泌を増加させる作用を持つ薬です。DPP-4阻害薬もインスリン分泌を増加させることはSU薬と同様ですが、少し作用が異なります。
ここで簡単にDPP-4阻害薬の作用機序について説明しましょう。
食事をして口から入った食物は、消化管(胃、腸など)に流れていきます。小腸でブドウ糖・脂肪酸・アミノ酸などの物質となって吸収されます。このとき、これらの物質の刺激により小腸壁にあるL細胞から、血中にGLP-1という消化管ホルモン(インクレチン)が分泌されます。このGLP-1が、すいβ細胞に作用してインスリン分泌を促して、血糖値を下げるわけです。
ところが、体内では、DPP-4(Dipeptidyl-Peptidase-4)というGLP-1を分解する酵素も同時に働きます。そのためインクレチン作用がGLP-1の分泌後、わずか数分以内で低下してしまいます。そのため、有効な作用が短時間で消失してしまうわけです。
ですから、この酵素を阻害することで、GLP-1の作用を長時間持続させようというのが、DPP-4阻害薬の働き方なわけです。