糖尿病ドクターの新しい糖尿病治療薬話
-第4回 DPP-4阻害薬で効果のあった実例
視力低下がきっかけで受診。第一選択薬としてDPP-4阻害薬を服用
前回は、DPP-4阻害薬の薬理作用についてお話しましたが、今回は実際の症例でどのような効果があったかをご紹介します。
この患者さんは、視力低下を主訴に近医眼科を受診したところ、両眼とも糖尿病性合併症である増殖性網膜症が認められて、当院の眼科に紹介されてきた男性です。数年前に健康診断で境界型糖尿病といわれていましたが、特に食事療法などの治療はしていなかったとのことです。眼科から糖尿病治療のため内科に紹介され、治療を開始しました。
初診時の体格は標準体型、聴打診に著変なし、神経学的にも異常はありませんでした。
血液検査
血糖 | 311mg/dL H | HbA1c | 9.7% H |
総コレステロール | 267mg/dL H | 中性脂肪 | 1,117mg/dL H |
BUN | 16.1mg/dL | CRE | 0.6mg/dL L |
eGFR | 112mL/min | 尿酸 | 8.6mg/dL H |
AST | 62IV/L H | ALT | 45IV/L H |
T-BIL | 1.1mg/dL |
尿検査
糖 | 4(+) | 蛋白 | (-) |
潜血 | (-) | ケトン体 | (-) |
上記の検査結果から、糖尿病だけでなく中性脂肪・尿酸値も高く、脂質代謝も不良で食事療法がまったくできていなかったと考えられます。脂肪肝による肝障害もありましたので、厳格な食事療法とともに薬物用法を開始し、DPP-4阻害薬を朝食後に50mgを服用してもらいました。
合併症として網膜症は進行していましたが、腎症はあまり進行していませんでした。治療による急激な血糖低下は、網膜症の進行に悪影響を与える可能性が大きいため、効果が確実であるが血糖低下作用が緩やかで、低血糖のリスクが少ないDPP-4阻害薬を第一選択としました。
その後の血糖・HbA1c値と尿酸値の変化は、血糖値の上下変動があるものの、そのほかは確実に改善を示しています。食事療法と経口薬(DPP-4阻害薬)が効果を示した症例です。