糖尿病ドクターの新しい糖尿病治療薬話
-第4回 DPP-4阻害薬で効果のあった実例
糖尿病歴が約20年。併用薬としてDPP-4阻害薬を服用
糖尿病歴が約20年という女性のこの患者さんの場合は、診断当初は食事療法で良好なコントロールを得ていました。ところがその後徐々に血糖値が上昇したことから、SU薬を開始、糖吸収障害であるα-GI薬も併用して、HbA1c 7.0%前後で経過していました。
やがてコレステロール値なども高値を示したため、スタチン薬も服用するようになりました。幸い糖尿病合併症はあまり進行せず、比較的安定した状態が続いていました。体格は標準体型です。
血液検査
血糖 | 155mg/dL H | HbA1c | 7.1% H |
総コレステロール | 221mg/dL H | LDLコレステロール | 133mg/dL |
BUN | 26.0mg/dL H | CRE | 0.78mg/dL |
eGFR | 54mL/min | 尿酸 | 5.5mg/dL H |
AST | 44IV/L H | ALT | 37IV/L |
尿検査
糖 | (+) | 蛋白 | (-) |
潜血 | (-) | ケトン体 | (-) |
第一選択薬としては、内因性インスリン分泌が低下していると考えてSU薬としました。食事療法も不十分と思えたことからα-GI薬も併用し、さらに食事指導により、ある程度まで血糖値が下がりました。ところが、いったん低下したHbA1cが再び上昇してコントロールの悪化を認めたため、2013年7月よりDPP-4阻害薬の追加投与を開始し、その分SU薬などの他の薬剤を減量しました。これによってHbA1cは6%台に低下し、その後は多少の変動はあるものの、6%台を維持できています。また追加投与後も、明らかな低血糖症状は認めていません。
以上のように、経口薬は患者さんのインスリン分泌能、食事療法の厳守、BMIなど個々の病態によりさまざまな組み合わせをすることで、血糖コントロールを改善させることができます。
原則としては、食事・運動などのみで、薬物を使用せずに血糖コントロールできることが理想ですが、それでもコントロールが不十分な場合、経口薬などを用いることとなります。どの薬をどのように組み合わせ、容量がどれくらい必要かは人によって異なります。主治医に相談して必要な検査を行い、現在のご自身の状態を十分に把握して、最適の治療を見つけることが重要です。
著者プロフィール:関谷 正志(医師)
1980年関西医科大学 医学部卒業。1998年より株式会社互恵会 大阪回生病院 内分泌代謝内科に勤務、2005年同 部長に就任。専門領域は内科、糖尿病。日本糖尿病学会、日本内科学会に所属。