血液から見える健康
-第11回 尿糖-他にもある糖尿病の検査
尿定性試験紙による尿糖検査について
尿糖検査は、採血のように痛みを伴わず簡便に行えることから、糖尿病のスクリーニング検査として有用です。
また最近は、尿定性試験紙が市販されていますので、自分でも簡単に尿糖検査ができます。
尿定性試験紙は、尿に浸すと試薬部分の色が数段階に変わり、その変化の程度で尿糖が多いか少ないかを簡単に調べることができる検査です。
試薬部分の色の変化から、(-)、(+)、(2+)、(3+)、(4+)といった具合に結果が判定でき、(-)は尿糖陰性(検出されず)、(+)~(4+)は尿糖陽性となります。
尿定性試験紙には、各段階別に尿糖の濃度が決められていますが、これは半定量値といって「このような色でこれくらいの濃度と推定される」というだいたいの目安という意味ですので、精密な生化学分析機で測定した場合の正確な定量値(例:168mg/dL)とは異なります。
なお、尿糖は、糖尿病でない健康成人の尿中にもわずかな量(2~20mg/dL)が出てくるものなのですが、通常の尿糖検査(尿定性試験紙)では検出されません。
さて、自分でも簡単に調べられる尿糖検査ですが、いくつか注意点があります。
- 尿糖検査は採尿のタイミングにより結果の意義が異なります。
●早朝第一尿
早朝第一尿は、寝る前に排尿して翌朝起床後最初の尿です。そのため、夜間に高血糖であった場合はこれを反映します。
●早朝第二尿(早朝空腹時尿)
早朝第二尿は、早朝第一尿排尿後から朝食前の尿です。そのため、早朝空腹時血糖を反映し、一日で最も尿糖が少なくなります。
●随時尿
随時尿は、尿をしたくなったときにする尿です。そのため、食前・食後などの状況により結果の見方が変わりますので、このことをよく理解して検査する必要があります。 - 尿糖検査は、血糖検査ほど正確ではありません。
- 陰性の場合、血糖が正常なのか軽度の血糖上昇なのかはわかりません。
- 大量の飲水などで尿が希釈(薄く)されたり、逆に大量の発汗などで尿が濃縮(濃く)されたりした場合、検査結果に影響します。
- 尿糖検査は膀胱に尿がたまっていた時間の血糖を反映するので、排尿した瞬間の血糖を反映しているわけではありません。
- 糖排泄閾値は、個人差や生理的変動があるため、同じ人でも検査する時期により陰性であったり陽性であったりすることがあります。そのため、血糖が正常でも尿糖が陽性となる場合があります。
糖尿病は、自覚症状がないまま進行してしまうことが多いので、尿糖を自分で定期的に検査することにより、食事内容や量、運動と尿糖の関係がわかり、生活習慣の改善による血糖コントロールへの意識が高まるのではないでしょうか。
著者プロフィール:堀 行雄(臨床検査技師)
2000年インクロムの提携医療機関に入職して以来、臨床検査室で忙しく検体検査をする日々。年間およそ5000人分の血液を分析。