血液から見える健康
-第18回 乳酸-他にもある糖尿病の検査
乳酸って?
これまでは糖尿病の検査としてメジャーなものを中心に説明してきましたが、前回に引き続き今回も少しマイナーな血液の検査項目「乳酸」について見ていきたいと思います。
乳酸は、体内のエネルギー代謝において重要な物質で、ブドウ糖を分解して体に必要なエネルギーを作り出す解糖と呼ばれる代謝経路に関与しています。
解糖とは、ブドウ糖を複数の化学反応によって段階的に代謝していく過程でエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)を作り出す経路です。
この過程で、ブドウ糖が代謝されて最終的に乳酸が生成されますので、ブドウ糖と乳酸の間には密接な関係があるというわけです。
具体的には、筋肉などにおいて運動時にエネルギーが必要になると、貯蔵されているグリコーゲンが代謝(分解)されてブドウ糖が生成され、このブドウ糖を代謝(分解)すること(解糖)により、エネルギー源であるATPが生成されます。
解糖によって増えた乳酸は、血中に放出されて肝臓へ送られます。肝臓では、酵素の作用で乳酸から糖新生によって再びブドウ糖に戻されます。そして血液を通して運ばれて筋肉などに取り込まれるのです。
糖新生とは、ブドウ糖を生成する経路のことで、解糖のほぼ逆の複数の化学反応によってATPを消費しながら乳酸が段階的に代謝(分解)されます。
それでは、乳酸は糖尿病とどのような関係があるのかについて説明しましょう。
糖尿病では、肝臓や筋肉において血糖が生成される(糖新生)より、乳酸を生成される(解糖)方が亢進しているため、乳酸の血中濃度が上昇している状態にあります。
乳酸は酸性ですので、血液のpHが酸性に傾いて高乳酸血症になり、乳酸アシドーシスを発現します(糖尿病以外でも、低酸素血症や肝障害などの原因による乳酸の過剰産生により乳酸の血中濃度が上昇すると、乳酸アシドーシスを発現します)。
乳酸アシドーシスの症状は、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、倦怠感、けいれんなどがあり、進行すると過呼吸、脱水、低血圧、昏睡状態などの重篤な症状を引き起こすこともあります。
ちなみに、血液のpHは常に7.35~7.45の間に保たれていますが、これが酸性に傾くとアシドーシス、アルカリ性に傾くとアルカローシスといいます。
また、糖尿病治療薬であるビグアナイド薬(BG薬)を服用している場合、稀に乳酸アシドーシスを発現することがあります。