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血液から見える健康

-第19回 グリコアルブミン・2-他にもある糖尿病の検査

日本赤十字社の献血協力者に対するグリコアルブミン検査導入

さて、ここで冒頭でも触れた日本赤十字社が2009年3月15日より開始した献血協力者へのグリコアルブミン検査について、もう少し詳しく説明しましょう。

献血協力者へのサービスのひとつに、採血検査で各検査値を提供するというものがあります。実は、以前はこの検査項目には肝機能の検査が3つあったのに対し、糖尿病関連の検査は含まれていませんでした。

糖尿病の検査が導入されていなかった理由はいくつかあります。
例えば、血糖は検査前に食事を摂ってはいけない検査項目の筆頭にあがるものですが、献血協力者が健康診断並みの空腹状態で献血に臨むというのは(献血の趣旨からも)あまり考えられないですから、数値に信憑性がありません。
また、血糖やHbA1c検査を導入するには、採血管も別に1本追加で必要な上に、従来とは別の検査機器を新たに導入しなくてはならなかったこともネックでした。

ところが国内の肝炎の新規発症が減ってきた一方で、糖尿病の発症が急増してきていた背景の変化に加えて、従来の検査機器と採血管で検査でき、かつ低コストのグリコアルブミンの試薬が開発されたため、糖尿病検査項目のグリコアルブミン検査が導入されるに至ったわけです。

グリコアルブミン検査導入の目的は、糖尿病のスクリーニング(検査)を行うことで糖尿病を早期発見し、糖尿病が進行して発症する合併症や妊娠糖尿病(妊娠糖尿病は高血糖状態が胎児に悪影響を及ぼし先天奇形のリスクが高まる病気で、発症率は全妊婦の3~5%)を防ぐことです。


グリコアルブミン検査の導入によって蓄積された約300万人の膨大なデータの統計結果から、全体の2~3%の方がグリコアルブミンの基準値を上回り(つまり、糖尿病かその予備軍とみられる高い値を示し)、その割合は年齢が上がるのに比例して上昇、60歳以上では10%超であることが分かりました。

さらに、高齢者はもとより若年者においても、グリコアルブミンの基準値を上回るデータが散見されています。献血されるのは、一般的に比較的健康な方が多いと思われますので、これらの統計結果は予想外であったと言えるでしょう。

繰り返しになりますが、グリコアルブミンは食後高血糖を反映することから、見逃されがちだった食後高血糖を早期発見できること、さらに、献血協力者に多い若年層の糖尿病の発見につながるなど、献血時のグリコアルブミン検査は糖尿病のスクリーニング(検査)として大変有用なのです。

糖尿病の検査というとまだまだHbA1cと血糖が主流ではありますが、グリコアルブミンは医療関係者に加えて糖尿病の患者さんも関心を持つようになりつつありますので、近い将来さらに普及するものと思われます。
 

著者プロフィール:堀 行雄(臨床検査技師)
2000年インクロムの提携医療機関に入職して以来、臨床検査室で忙しく検体検査をする日々。年間およそ5000人分の血液を分析。

 

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