歯医者さんで糖尿病対策
-第2回 歯周病を予防する
歯周病って、どんなもの?
こんにちは、歯科医師の安岡大志です。
前回、私たち歯科医が糖尿病を発見することもあるくらい、歯周病と糖尿病は関連するというお話をしました。今回は、糖尿病とも深くかかわるこの歯周病について、お話をさせていただきます。
歯周病とは、ひと言でいうと「歯を支えている顎の骨や、歯の周りの歯ぐきの病気」のことです。歯ぐき(歯肉)の内側は外からは見えませんが、歯の根元にあるセメント質と、歯を支えている歯槽骨という顎の骨とその両者を結びつけて支えている歯根膜線維からできています。
歯周病を引き起こす細菌は、この歯根膜線維を破壊しながら、歯の根を伝って深く進行します。歯周病は、虫歯と違って歯の形が壊れていくのではなく、歯の周囲を支えている組織が壊れていく病気です。
日本人の成人の8割の方がこの病気に罹っています。歯周病は、まさに生活習慣病といわれています。
ここで、歯周病が起こるメカニズムを勉強してみましょう。原因が分かれば、歯磨きの大切さや、どこにポイントを置いて磨けば良いか分かります。ひとつひとつ、想像しながら読み進めてみてください。
まず、「プラーク(歯垢)」とは細菌の塊のことです。口の中には、1/1000gの中に1億を超える細菌が棲みついています。この細菌には、善玉の細菌と悪玉の細菌とがあります。
歯の表面では、唾液成分である糖タンパクが「ぺクリル」という薄い皮膜をつくります。
そしてこれをベースとして、食べ物の中からショ糖を使ってグリコカリックスというネバネバした物質が自分の家づくりを始め、屋根を作って家全体を覆いはじめます。
細菌たちにとって、棲みやすい場所ができたわけですから、悪玉の細菌が家の中へ多量に侵入して、増えていきます。これを「バイオフィルムプラーク」と呼んでいます。
この悪玉の細菌は、食べ物(栄養)や水も十分で温度は 37 ℃前後という環境を好みます。食後の口の中がまさにこの環境ですね。この環境下で、悪玉細菌が産生する毒素で歯ぐきを腫らし、血や膿を出したり、歯の周りの骨を溶かしたりします。
バイオフィルムプラークは、外からの抗生剤や唾液中の抗菌成分の攻撃に対して膜をつくって薬が効かないようにしています。つまり、歯磨きの時には、このバイオフィルムプラークを歯ブラシでお掃除する必要があるのです。
歯ブラシで物理的にバイオフィルムプラークを除去しない限り、炎症は見えないところで、どんどん進行していきます。
糖尿病の方は、細菌への抵抗力が低下して感染しやすく細菌が繁殖しやすいので、歯周病になりやすく、さらに進行が早くなります。
やっかいなのは、このバイオフィルムプラークは柔らかい汚れなのですが、唾液や血液などで石灰化する(硬く石のように固まる)ことです。
こうなると、歯ブラシでは除去できない汚れとなり、歯科医院で専門家によるクリーニングが必要です。ですから、虫歯や歯周病などの自覚症状が無くとも、定期的な検診やクリーニングをおすすめします。