糖尿病と目の合併症
-第4回 眼底出血と全身の合併症
網膜静脈閉塞症(RVO)が起きたとき、全身の血管も動脈硬化を起こしている
網膜静脈閉塞症(RVO)は、先に説明したように、動脈硬化と関連が深い眼底疾患ですので、これが起きるということは、全身の血管もそれなりに動脈硬化を起こしていると考えられます。
ですから、糖尿病や高血圧症・脂質異常症・高尿酸血症のコントロールや禁煙の必要性を患者さんに説明しています。
高血圧に関しては130/80mmHg以下、脂質異常症に関してはLDLコレステロールを(リスクに応じて)100~160mg/dL以下でのコントロールが要求されます。
もちろん、糖尿病網膜症もこれら高血圧症・脂質異常症・高尿酸血症・喫煙の危険因子が増えるほど進行しやすくなります。糖尿病患者さんはこれらの合併症をもっていることが多く、血糖コントロールだけでなく、こうした合併症も多面的にコントロールしていく必要があるのです。糖尿病網膜症の悪化だけでなく、これらの他の合併症から派生してくる疾患の予防もしなければなりません。
そうは言っても、なかなか良好なコントロールを保つことは難しいことも多いです。
薬だけで上手くいかない場合でも、体重過剰気味の患者さんであれば、体重が5kg減ることで、血圧や血糖・脂質の値が減少してくることも珍しくありません。
また、食事に塩分(ナトリウム)が多くカリウムが不足している場合は、血圧が上がりやすくなります。調味料を控えめにして出汁や風味で味気なさを補うことで減塩を、海藻・きのこ類などカリウムの多い食品を積極的に摂るなど、食事の工夫も治療の効果を上げるのに功を奏します。
減塩というと高血圧というイメージが強いかもしれませんが、糖尿病の人は高血圧になりやすいことから食事療法では、カロリー制限だけでなく減塩も指導しています。体重5kg減と食事の減塩を意識してみましょう。
著者プロフィール:井上 慶子(医師)
2001年鳥取大学医学部卒業。豊中病院、西淀病院、西眼科勤務(いずれも大阪府)を経て、2012年4月より医療法人 光輪会 さくらクリニックにて管理医師、2013年8月より医療法人愛成会 理事就任。専門領域は眼科。日本眼科学会、日本眼科手術学会所属。