糖尿病と目の合併症
-第5回 糖尿病網膜症の治療
網膜症の治療は、レーザー・手術・注射・薬(点眼・内服)がある
今回は、糖尿病網膜症の治療について見ていきたいと思います。
糖尿病という疾患の本質は、血管が傷むことによる大血管および小血管の循環不全です。
網膜へも血管を通して栄養が運ばれてくるわけですが、糖尿病によってこの血管が閉塞するとその不足分を補おうとして網膜には新生血管が現われます。
この新生血管がさまざまな障害を引き起こすため、これを予防および消失のため網膜症の治療をするのです。
治療には、レーザー光凝固術、硝子体手術、そして注射による治療でトリアムシノロンのテノン嚢下(のうか)注射、ベバシズマブの硝子体内注射、薬(点眼・内服)があります。どの治療も視力が少し回復することもあれば、変化しないことも、あるいは悪化することもあります。ここでは、レーザー光凝固術、硝子体手術、そして注射による主な治療法について見ていきたいと思います。
レーザー光凝固術
レーザー光凝固術は、蛍光眼底検査で網膜の血流の悪い場所を見て、範囲に応じて一部分、あるいは全体をレーザーで焼灼していきます。
これは基本的には視力を上げるための治療ではなく、失明しないための治療ですから、レーザー術前は1.0見えていた患者さんでも、術後は矯正しても0.3以下などと視力が落ちてしまう場合があります。
一番不幸な失明、という事態を避けるためにやむを得ずこうした治療に踏み切るしかないのです。
レーザーで視力が落ちる原因として多いのが、黄斑浮腫がひどくなることです。
これに対しては状況に応じて、点眼薬+トリアムシノロンのテノン嚢下注射・点眼薬+ベバシズマブの硝子体内注射・硝子体手術で対応しています。
硝子体手術
硝子体手術は、眼底出血が引かなくて物が見えにくい場合、増殖膜による網膜の牽引で障害がある場合、黄斑浮腫がひかない場合などで選択される治療法です。また、硝子体手術をすると白内障の進行が早まることもありますので、白内障も進んでいる患者さんや年齢的に進行しそうな患者さんの場合には、白内障手術も同時に行われることもあります。