糖尿病ドクターの新しい糖尿病治療薬話
-第1回 SGLT2阻害薬は、ブドウ糖の再吸収を阻害する
SGLT2阻害薬の有効性、安全性はどうか?
SGLT2阻害薬の有効性
さて、ここでSGLT2阻害薬の有効性はどんなものがあるのか見てみましょう。
●インスリン作用に依存しない
食事療法、運動療法や他の血糖降下薬(インスリン分泌促進系の薬を除く)との併用が可能です。
●体重低下
尿糖として余分なエネルギーが排泄されるため、代償的に脂質の利用が亢進されます。そのため特に内臓脂肪が減少すると言われています。
●インスリン抵抗性の解除
内臓脂肪の減少は、インスリン抵抗性の改善をきたします。インスリンの効果を高めることにより、すい臓への負担が軽減します。
●低血糖のリスクが少ない
SGLT2阻害薬のみの服用時は、低血糖のリスクが少ないです。SGLT2の働きを阻害しても、SGLT1が補充的にブドウ糖の再吸収を行うためです。
●血圧降下作用
体重・脂質の低下の波及効果として、血圧の低下なども期待できます。
SGLT2阻害薬の安全性
では、その安全性についてはどうでしょうか。
●多尿・頻尿による脱水症状のリスク
SGLT2阻害薬の第一の副作用として、多尿・頻尿・口渇・多飲などがあります。これらは、浸透圧利尿によるもので、体重減少にも影響しています。特に夏の時期・高齢者・飲酒などの条件が重なると、容易に脱水症状を引き起こす可能性も高くなるため、注意が必要です。
●他剤との併用時に低血糖リスクも
単剤の服用時は低血糖のリスクが少ないSGLT2阻害薬も、インスリン分泌促進系の他剤(特にSU薬)や、インスリンとの併用では低血糖を起こすこともあります。そのため、低血糖を起こしやすい薬を減量するなどの必要があります。
●ケトン体の増加
ブドウ糖の排泄が大量となるため、内臓脂肪燃焼によるケトン体の増加が認められています。ケトン体が増えると血液が酸性に傾き、重篤な場合は、意識障害などに陥ることがあります。これをケトアシドーシスと言います。ただし1,000μM(マイクロメートル)未満では、重篤なケトアシドーシスを起こすことは少ないです。
●腎機能に対する影響
腎機能に対しての影響は少ないと言われていますが、腎機能が障害されている場合、この薬の効果は減弱します。腎臓に軽度障害があると、HbA1cの改善率は20%程度弱くなると言われています。
以上のように利点と欠点があるため、その使用にはいろいろと基準が設定され、この使用基準を厳守することにより、有効な治療が得られると考えられます。
次回は、どういった患者さんがSGLT2阻害薬に適しているか、服用しない方がいいのはどんな患者さんかについて、もう少し詳しくお話ししたいと思います。
著者プロフィール:関谷 正志(医師)
1980年関西医科大学 医学部卒業。1998年より株式会社互恵会 大阪回生病院 内分泌代謝内科に勤務、2005年同 部長に就任。専門領域は内科、糖尿病。日本糖尿病学会、日本内科学会に所属。