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Come On! 糖尿病教室

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-第21回 早期腎症の検査

早期腎症発見のための検査と病期分類をおさらい

第4回でも少し触れていますが、早期腎症の発見には、尿検査がとても重要です。患者さんの中には、毎回受診する度に採尿をしなければならないことを疑問に思う方も多いと思いますが、これは早期腎症や腎症の進行を発見するためにとても大切な検査です。

糖尿病を発症すると、早期腎症で尿に蛋白が出る前に体の中ではすでに兆候が現れ、尿細管の糸球体で過剰ろ過が起こっています。その後、微量な蛋白が尿中に出現します。しかし、尿定性試験紙の蛋白濃度感度は100~200mg/dL程度のため、この尿定性試験紙だけでは早期腎症かどうかはわかりません。

微量な蛋白は微量アルブミンと呼ばれ、この微量アルブミンが尿中にどれだけ出現しているかで、腎症の発症を発見することができます。微量アルブミンが29mg/g・Cr以下なら正常です。30~299mg/g・Crの時期が腎症第2期、300mg/g・Cr以上検出される時期が腎症第3期で顕性腎症期、これは顕性蛋白尿期とも言われ、食事療法で塩分制限や蛋白制限が必要な時期です。

腎症は、糖尿病3大合併症の中では最後に現れる合併症です。また、透析という言葉が独り歩きして、「腎症=透析=糖尿病末期」という非常に強いネガティブなイメージから「腎症になったらもう終わりだ」という声を患者さんから聞くことがよくあります。

確かに以前は、腎症は進行するともう治らない、つまりがんばって療養しても元には戻らないと考えられていましたが、研究が進んだ今では、進行してしまった病期ステージが元に戻って腎機能が回復することがわかっています。
とはいえ、腎症は、むくみなどの自覚症状が出現するころには、かなり進行してしまっていますし、それまでは無症状であるため、受診時の尿検査や血液検査などの定期検査がとても重要です。

腎症の検査については、本サイトのコラム「血液から見える健康(第15回第16回)」にも詳しく触れられています。
 

腎症の病期ステージの改定

糖尿病性腎症合同委員会から、腎症の病期ステージの改定が報告されました(2014年1月10日)。
病期分類に用いるGFR(糸球体ろ過量)は、年齢と血清クレアチニンから簡易的に換算できるeGFR(推算糸球体ろ過量)に変更されました。
また、従来の分類にあった3期A・B(顕性腎症前期・後期)の区分は行わないことや、尿アルブミン値の程度にこだわらず、GFR(eGFR)が30ml/分/1.73m2未満をすべて腎不全とするという点が変更されています。

次回は、今回の腎臓に関連する新しい血糖投下薬について、お話をします。

 

著者プロフィール:小宮山 恭弘(糖尿病療養指導士)
1988年 行岡医学技術専門学校臨床検査科卒業。2001年より大阪鉄道病院にて糖尿病療養指導士として勤務。2015年3月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科卒業。博士(生活科学)。

 

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