Come On! 糖尿病教室
-第23回 肥満になりやすい遺伝子
脂肪細胞は悪者?
脂肪といえば、悪いもの・余分なものと皆さん思っていませんか?でもそんなことはありません。脂肪細胞にはちゃんと役割があるんです。脂肪細胞は、白色細胞と褐色細胞のふたつに分類できます。
白色脂肪細胞は、余剰エネルギーの貯蔵庫として機能しています。白色脂肪細胞は、全身のあらゆるところに分布し、特に下腹部、臀部、大腿部、背中、上腕、内臓周囲などに多く分布しています。
白色脂肪細胞は、母体内と生後1年間、そして思春期で増加し、カロリー過剰摂取により増加していきます。白色脂肪細胞は、エネルギー過剰状態になると細胞の直径で20倍、容積で400倍までに膨れ上がります。白色脂肪細胞は他の細胞と異なり、一旦、細胞数が増えると、ほとんど死滅しません。つまりダイエットに成功して減量しても、細胞自体が萎縮してサイズが小さくなっただけで数は減りませんので、エネルギー過剰状態になると細胞は大きくなって肥満が復活することになります。
もうひとつの褐色脂肪細胞は、貯蔵可能な脂肪量が白色脂肪細胞よりも少なく、首、脇の下、肩甲骨、心臓、腎臓周囲に分布しています。体温を維持するために、UCP1(脱共役蛋白質1)を介してのエネルギー消費・熱産生機能を持ち、とくに寒冷環境に身を置いたときに発揮します。
成長期から徐々に減少し、10歳代で半数に中高年では10%以下に激減します。加齢により脂肪がつきやすくなるのは、基礎代謝の低下と共に、褐色脂肪細胞の減少が大きな要因となっています。いわば褐色細胞は基礎代謝を上げ、体温調節に役立つ大切な脂肪です。
Rさんのように、患者さんはよく「運動もしているし、そんなに食べていないのに水を飲んだだけで太る」とおっしゃいます。しかし実際のところ、摂取カロリーと消費カロリーの足し算引き算で、体重の変化は起こります。汗をかくと一時的に体重は減ります。これは必ずしも脂肪が燃焼された分だけの差ではなく、水分喪失(脱水)による一時的な体重減も含まれています。
短時間の運動で体重がぐっと減る場合には、単に脱水を起こしているだけのことが多いです。逆に水を大量に摂取すると一時的に体重が増加します(お相撲さんの体重測定で体重の軽い人がたくさん水を飲んで計量に臨むあれです)。しかし余剰な水分は濾過され、尿や汗となって出ていくため、水を飲んだから太ることはありません。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、20年前、10年前と比べ、30~50歳の中高年男性の肥満率は年々上昇傾向にあり、今や3人に1人はBMIが25以上の肥満者となっています。
一方で女性の30~60歳の肥満者は減少し、20~40歳では逆にやせ型の女性の割合が増加しています。女性では肥満者が多くなるのは60歳以上の高齢者です。
このように働き盛りの男性に肥満者が増え、これが将来のメタボリック症候群に進行し、脳血管障害・心臓疾患の発症に大きく影響することになります。
男性と女性の違いには、脂肪の蓄積状態にも現れます。男性が、いわゆるビヤ樽型・リンゴ型肥満と呼ばれる上半身中心の内臓脂肪型肥満になりやすい一方、女性は、洋ナシ型と呼ばれる下半身肥満である皮下脂肪型肥満と、性差による違いがあります。
また男性の内臓脂肪型肥満は、糖尿病・高血圧症・脂質代謝異常症・動脈硬化性疾患などと関係が深いことも特徴です。