Come On! 糖尿病教室
-第24回 内臓脂肪型肥満とアディポサイトカイン
内臓脂肪から分泌される、生理活性物質「アディポサイトカイン」
内臓脂肪から分泌される生理活性物質「アディポサイトカイン」には、悪玉と善玉があります。脂肪細胞が肥大すると、悪玉が増えて善玉が減ります。
悪玉アディポサイトカイン
肥満を助長し、インスリン抵抗性増大の悪循環を引き起こす悪玉アディポサイトカインには、動脈硬化を促進する作用があります。これらは脳梗塞や心筋梗塞などの大血管疾患の発症に大きく影響するものです。
TNF-α (Tumor Necrosis Factor):
細胞膜のインスリンの受容体を障害してインスリン抵抗性を引き起こします。
PAI-1(Plasminogen activator inhibitor):
血栓を作りやすくします。
HB-EGF(heparin binding-epidermal growth factor-like growth factor):
血管の中膜を構成する平滑筋の血管内への移動・増殖を引き起こし動脈硬化を促進させます。
善玉アディポサイトカイン
善玉アディポサイトカインには、動脈硬化を予防する作用があります。
アディポネクチン:
白色脂肪細胞由来のインスリン感受性ホルモンであり、血中のアディポネクチンの増加は肝臓でのインスリン抵抗性を改善し、糖新生を抑制、さらに血中の遊離脂肪酸、中性脂肪を低下させる作用を持ちます。
レプチン:
過食による肥満と関係し、糖代謝や糖の取り込みを活性化させる抗肥満ホルモンです。糖の酸化と利用を促進して、糖が中性脂肪に合成されてエネルギーとして貯蔵されるのを防ぎます。体内でレプチンの量不足や受容体に変化があると過食をもたらし、代謝の不活性化、結果的に肥満につながります。
肥満そのものは、すぐには生命に危険の生じることのない状態ですが、肥満による内臓脂肪蓄積は、将来の脳梗塞や心筋梗塞などの発症のリスクを高めます。高齢の患者さんは、よく「ぴんぴんころりが一番いい」とおっしゃいます。亡くなる直前までは健康で活動的な生活を送り、亡くなるときは苦しまず、周りに迷惑をかけずに死にたいという意味ですが、そのためには脳梗塞などの血管障害の発症予防に努める必要があります。
次回は、脂肪蓄積に関連して、最近話題の異所性脂肪について詳しくお話します。
著者プロフィール:小宮山 恭弘(糖尿病療養指導士)
1988年 行岡医学技術専門学校臨床検査科卒業。2001年より大阪鉄道病院にて糖尿病療養指導士として勤務。2015年3月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科卒業。博士(生活科学)。