血液から見える健康
-第10回 グルカゴン-他にもある糖尿病の検査
グルカゴンって?
前回までのコラムでは糖尿病の検査として、インスリン(IRI: immunoreactive insulin) やCペプチド(CPR:C-peptide immunoreactivity)について説明しましたが、今回は、インスリンと逆の働きをするホルモンであるグルカゴンについて詳しく見ていきます。
インスリンはすい臓のβ細胞で作られると前回のコラムでも書きましたが、グルカゴンはすい臓のα細胞で作られます。
グルカゴンとインスリンは逆の働きをもち、密接な関係があります。
グルカゴンは血糖値が低下するとすい臓から分泌され、血糖値を上昇させます。インスリンは血糖値が上昇するとすい臓から分泌され血糖値を低下させます。
このようにこれらホルモンは血糖値により調整されていますが、グルカゴンは直接すい臓のβ細胞に働きインスリンを分泌させる働きもあります。
ではここで、グルカゴンが血糖値を上昇させる仕組みをみてみましょう。
①肝臓・筋肉におけるグリコーゲン分解の促進、グリコーゲン合成の抑制
体内では、余分な血糖は肝臓で取り込まれてグリコーゲンという物質に合成されて蓄えられます。そして体内で血糖が必要になったら、グリコーゲンを分解して血糖に戻します。ですから、肝臓のグリコーゲン分解を促進し、血糖のグリコーゲン合成を抑制すれば血糖が上昇します。
②肝臓における糖新生の促進
①の肝臓に蓄えられたグリコーゲンすべてを血糖に分解して体内で消費されてしまった場合、アミノ酸、乳酸、ピルビン酸などから血糖を作り出すことができます。これを糖新生といい、これを促進することにより血糖が上昇します。
③脂肪細胞における中性脂肪の分解
また、肝臓で取り込まれた血糖は、グリコーゲンだけでなく中性脂肪という物質に合成されて蓄えられます。体内で血糖が必要になったら逆に中性脂肪を分解して血糖に戻します。ですから、肝臓の中性脂肪分解を促進すれば血糖が上昇します。