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糖尿病のあれこれ

-第10回 糖尿病と心臓病

自覚症状がないまま、突然心筋梗塞が襲うことも

狭心症も心筋梗塞も心臓の血管が細くなったり、詰まったりする、似たような病気ですが、怖いのは狭心症や心筋梗塞が前触れもなく突然発症することなのです。ちょうど前述した松村邦洋さんのケースのようにです。

狭心症になると、歩いたり階段を上ったりすることで、胸が痛いとか胸の圧迫感などがあらわれ、休むと治まるという症状があらわれます。この段階で病院に行けば、血管を広げたり、心筋梗塞を予防する薬を投与されたり、場合によっては心臓の血管を広げる手術を受けることができます。

ところで、実際に糖尿病から狭心症になった患者さんの心臓を、造影剤を使って検査することがあるのですが、やっかいなことに、通常の狭心症の場合と異なって血管が全体的にごつごつして細くなっている場合が多く見られます。こういった場合は、細いところを一ヵ所広げても、他にもたくさんの病変が存在して、治療が難しいことが多いのです。

また糖尿病から狭心症になった場合、もうひとつやっかいなことがあります。これは、狭心症になっても症状をまったく感じない場合があるということです。これを無症候性の狭心症といい、糖尿病の神経障害が原因ではないかと考えられています。やはり普段から十分に糖尿病の治療を行うことが必要ですね。

あまりうれしくない話ばかりしましたが、決して悲観することはありません。というのは、糖尿病とその予備軍とされる人は全国でおよそ2,000万人近くいるのです。その中で狭心症や心筋梗塞に至る人はごく一部です。多くの人は、健康な日常生活を送っているのです。

大事なことは、糖尿病を食生活の改善や運動、薬剤などで十分に治療し、さらに狭心症や心筋梗塞のサインを見逃さないことなのです。このコラムを通じて、みなさんが糖尿病や心臓病について理解を深めることができ、病気の予防につながれば幸いです。
 

著者プロフィール:石川 一彦(医師)
1992年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、国立大阪病院、国立循環器病センター勤務、米国Yale大学留学等を経て、2005年より医療法人平心会 大阪治験病院に勤務。森ノ宮医療大学客員教授。専門分野は循環器内科、総合内科。
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