血液から見える健康
-第14回 糖尿病と肥満-肥満に関連する検査
糖尿病と肥満の関係
前回まで糖尿病の検査としてHbA1cをはじめとしたいろいろな項目について説明してきましたが、今回は糖尿病と関係の深いメタボリックシンドロームの原因である肥満に関連する検査について見てみましょう。
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、耐糖能異常、血圧上昇、脂質異常などの動脈硬化の危険因子を複数持つことにより診断されます。日本では、メタボリックシンドローム診断基準がメタボリックシンドローム診断基準検討委員会によって提唱されています。
メタボリックシンドローム診断基準
以下の条件[A]に加え、[B]のうち2つ以上該当する場合、メタボリックシンドロームと診断されます。
[A]
●内臓脂肪蓄積
ウエスト周囲径 男性≧85cm、女性≧90cm
(内臓脂肪面積 男女とも≧100cm2)
[B]
●高トリグリセライド血症 ≧150mg/dL
かつ/または
低HDLコレステロール血症 <40mg/dL
●高血圧
収縮期血圧 ≧130mmHg
かつ/または
拡張期血圧 ≧85mmHg
●空腹時高血糖 ≧110mg/dL
糖尿病と肥満には密接な関係がありますが、それは次のようなメカニズムのためです。
脂肪細胞からアディポサイトカインと呼ばれる生理活性物質が分泌されています。このアディポサイトカインには、コレステロールのように善玉と悪玉が存在します。
複数ある善玉アディポサイトカインの中でも代表的なものがアディポネクチンです。このアディポネクチンは、内臓脂肪が蓄積すると減少してしまいます。アディポネクチンが減少することで、インスリン抵抗性、高血糖を引き起こします。
また、悪玉アディポサイトカインであるTNF-αやMCP-1は、内臓脂肪が蓄積すると増加します。そして悪玉アディポサイトカインが増加することで、インスリン抵抗性、高血糖を起こします。
このように内臓脂肪の蓄積によりアディポサイトカインに異常が起こると、インスリン抵抗性を引き起こし、インスリン抵抗性により脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出を増加させ、さらにインスリン抵抗性を引き起こすという悪循環を生み出します。このように肥満によって耐糖能異常から糖尿病になるリスクが高くなります。