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糖尿病腎症を知る!

-第2回 腎症になるとどうなる?

糖尿病腎症の病期分類

糖尿病腎症は尿検査や血液検査の結果によって、第1期から第5期に分類されます。

第1期は腎症前期とされ、尿検査や血液検査では異常を示さない時期です。腎臓の基本的な機能の指標である糸球体ろ過率(GFR)やクレアチニンクリアランスは正常~高値を示します。

第2期は腎症早期です。通常の尿検査では尿タンパクは出ていないのですが、微量アルブミンが尿に出てくる時期です。この時期に適切な治療を行えば腎症の寛解が得られることがわかっており、この時期をのがさないためにも通常の尿タンパクのチェックのみならず微量アルブミン尿のチェックがたいへん重要となります。

第3期は、第3期Aと第3期Bとに分けられます。この時期は通常の尿検査で尿タンパクが認められる時期で顕性腎症期とよばれます。
第3期Aは、顕性腎症前期であり尿タンパクは認められるものの、腎機能の低下はまだ認められていない時期です。
第3期Bは、顕性腎症後期であり尿タンパクが認められるだけでなく腎機能の低下が認められます。腎機能の低下とは具体的にはGFRが60mL/分以下や尿タンパクが1g/日といった所見が認められる場合です。

第4期は腎不全期です。腎機能の著明な低下を認める時期であり、血清クレアチニンの上昇が認められます。この時期までくると一般的には腎症の改善は難しく治療方針としてはさらなる悪化予防と、腎機能悪化にともなう種々の合併症の治療といったことが必要になってきます。
たとえば尿量減少にともなって出現する全身のむくみに対しての治療や、高カリウム血症、腎性貧血の治療などです。

第5期は透析療法期です。腎機能が廃絶し透析療法を行っている時期です。末期腎不全期の合併症、透析にともなう合併症に対する予防、治療が必要になります。

このように各病期において治療方針や食事療法などが変えられます。病期ごとに適切な治療をすることで初期であれば腎症が改善する場合もあり、またそうでなくてもさらなる増悪を予防することができます。

末期腎不全期では適切なタイミングで透析療法に代表される腎代替療法を準備して開始することで、体にかかる負担軽減やさらなる合併症の予防につながります。よってそれぞれの患者さんが、どの病期にあたるのかを把握し対処することが非常に重要なのです。
 

著者プロフィール:辻本 吉広(医師)
1995年大阪市立大学医学部卒業。1996年より医療法人蒼龍会 井上病院内科に勤務。専門分野は内科。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本腎臓学会、日本透析医学会に所属。日本内科学会認定医、日本透析医学会認定医。

 

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