糖尿病腎症を知る!
-第4回 治療法は-その1
糖尿病腎症の発症させない、進行させないために
治療の基本は、血糖・血圧・脂質の管理を行って糖尿病腎症の発症予防につとめることです。また、既に発症している場合は、その進展抑制を目指すことです。糖尿病腎症になると高血圧をともなうことが多いため、薬物療法では血糖コントロールのための薬剤だけでなく、降圧剤を用いることもあります。
血糖コントロール
血糖コントロールが、糖尿病腎症の発症予防と進展抑制に効果があったと数々の試験で報告されています。1型糖尿病においてはアメリカで行われたDCCTという大規模臨床試験で、また、2型糖尿病おいてはイギリスで行われたUKPDSや、日本で行われたKumamoto studyでその有用性が示されています。
血糖コントロールのためには、食事・運動療法、内服薬やインスリンなどの薬物療法を行います。血糖管理目標としては、HbA1c(JDS値) 6.5%未満を達成したいところです。
ただし、腎症の病期が進み腎不全期にある場合は、血糖コントロールのためにどの薬剤を使用するかを十分検討する必要があります。というのは、腎不全期になると、内服薬のうちスルホニアウレア薬(SU薬)は腎不全期には遷延性の低血糖(強い低血糖が長時間続く)をきたす可能性があるため、減量もしくは中止する必要があります。
また、インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリン誘導体(TZD薬)やビクアナイド薬(BG薬)は腎不全患者では禁忌です。よって、内服薬の使用に制限のある腎不全期では、食事療法だけでは血糖コントロールがつかない場合にインスリン注射が必用となるケースが多いのです。
血圧コントロール
高血圧をともなうことが多い糖尿病腎症では、血圧のコントロールも腎症の進展予防のために非常に重要です。腎症では血圧の目標値は130/80mmHg未満を、タンパク尿が1g/日以上の場合は125/75mmHg未満を目標にするとされています。
降圧薬の中でも、レニン-アンギオテンシン系阻害薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害薬)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が特に有用とされています。
これらの薬剤の効果は、単に全身の血圧を下げるという機序だけではありません。腎臓内の糸球体は、輸入細動脈から血液を受けて輸出細動脈へ血液を流出させています。ACE阻害薬やARBといった薬剤は、これらの血管でも特に輸出細動脈を拡張させることで、糸球体内の圧を上昇させないという作用があり、この作用によって腎臓の障害を予防するとされています。
脂質コントロール
日本人の糖尿病患者のおよそ90%が2型糖尿病です。2型糖尿病とは、血糖値を下げる働きをするインスリンの分泌量は十分あるにもかかわらず、その働きが弱いため血糖値が下がらないタイプです。血糖値が高い状態が続くと、肝臓ではインスリンをさらに分泌しようとします。
ところが、肝臓でインスリンを分泌するときに中性脂肪も一緒に分泌されるため、血糖値が高いことで結果的に血液中の中性脂肪も増えてしまいます。中性脂肪が増えるとどうなるかというと、HDL(善玉)コレステロールが減ってLDL(悪玉)コレステロールが増えます。LDL(悪玉)コレステロールが増えると、動脈硬化になるリスクが高まります。
そのため、腎症が発症しているかどうかにかかわらず、糖尿病の場合は脂質コントロールも重要なのです。LDL(悪玉)コレステロールの目標値は、120mg/dL未満とされています。