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糖尿病腎症を知る!

-第3回 早期発見のために

糖尿病腎症の検査

尿検査

腎症のチェックには、尿検査が簡便かつ非常に重要な検査です。
尿検査をするのは、尿に糖がでているかどうかを調べるのではなく、尿タンパクの有無を調べることが目的です。

しかし糖尿病腎症の第2期(いわゆる早期腎症)をみつけるには、通常の尿タンパクのチェックでは不可能です。そのため、通常のタンパク尿より微量のアルブミン尿の有無を調べます。通常の尿検査でタンパク尿が「陰性」か「1+」程度だった場合に、アルブミン尿を測定します。

尿中のアルブミン(単位mg)とクレアチニン(Cr)(単位g)を測定し、その比が随時尿で30~299mg/gCrの範囲であれば微量アルブミン尿が「陽性」と判断されます。これが3回の測定中2回以上あれば、早期腎症=糖尿病腎症2期と判断されます。
この時期が治療によって寛解・退縮といった病態の改善が期待できる病期ですから、その診断は非常に重要です。

アルブミン尿300mg/gCr以上の場合は、通常の尿タンパクをチェックすることになります。その場合、どれだけの量のタンパクが尿中にでているのかも評価する必用があります。尿タンパクが陽性でも、できるだけその量は少ない方が良いことになります。
 

血液検査

糖尿病腎症の診断および病期分類において、尿検査と同様に重要なのが糸球体ろ過率(GFR)です。

一般的な血液検査での腎機能の項目といえば尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)です。これらの値が高ければ腎機能が悪いということになりますが、尿素窒素は腎機能以外の要素でも変化しますし、クレアチニンは年齢・性別・体格などで基準値が異なります。

そのため、単に尿素窒素やクレアチニンを測定するのではなくGFRによって腎機能を評価する方がより正確です。GFRの値を求めるには実際の診療では、(1)血液のクレアチニンと尿中のクレアチニンを測定し計算式でクレアチニンクリアランスという値を求めGFRの代用とする方法と、(2) 血液のクレアチニンと年齢からGFR値を推算する計算式で推算GFR(eGFR)を求める方法があります。

日本人の場合、90mL/分/1.73m2未満だとGFRが低下していると判断されます(ただし糖尿病腎症の初期は逆にGFRが高値になっている場合もあります)。そして60mL/分/1.73m2未満で、糖尿病腎症第3期Bと診断されます。

腎症の状態によっては、大量のタンパク尿が認められネフローゼ状態となる場合もあります。ネフローゼでは、全身にむくみや腹や胸に水がたまるといった症状が現れ、放置すると死に至るほどのものです。

そのためネフローゼ状態が疑われる場合は、上述の尿タンパク量の評価に加えて、血液中のタンパク質、特にアルブミン値のチェックも必要です。ネフローゼ状態では血液中のアルブミン値が低くなります。
 

画像検査

第1期では腎臓の腫大が認められる場合がありますが、それ以降、腎機能の悪化が進むと、一般的には腎臓の萎縮が進んでいきます。腎臓のサイズをチェックするためには、腹部超音波検査が簡便に行えます。

この検査は糖尿病腎症のためのチェックだけではなく、尿路結石や腎臓がんなど思わぬ他の疾患がみつかることもありますので、適宜検査しておいたほうが良いでしょう。
 

その他

糖尿病で腎機能が悪ければ必ず糖尿病腎症かというと、そうではない場合もあります。

糖尿病網膜症や神経障害がまったくないのに腎臓だけが悪い場合や、腎機能の悪化が急激に進行している場合、またタンパク尿だけでなく尿検査で潜血反応が高度という場合があります。これらの場合、糖尿病腎症ではなく他の疾患が原因で腎機能障害である可能性がありますので、さらなる精査が必要なケースもあります。
 

著者プロフィール:辻本 吉広(医師)
1995年大阪市立大学医学部卒業。1996年より医療法人蒼龍会 井上病院内科に勤務。専門分野は内科。日本内科学会、日本糖尿病学会、日本腎臓学会、日本透析医学会に所属。日本内科学会認定医、日本透析医学会認定医。

 

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