糖尿病と血管障害
-第2回 糖尿病と脳血管障害(脳卒中)
HbA1cが1%上昇すると、脳卒中の発症率は12%上昇
今回は、糖尿病と脳血管障害(脳卒中)についてお話したいと思います。
日本人の糖尿病患者は2007年の厚生労働省の調査で患者数890万人、予備軍は1,320万人と発表されています。これは日本人の5人に1人が糖尿病に罹患もしくは予備軍ということで、まさに国民病ということを意味します。
一方、脳卒中は我が国の死亡原因の第3位、寝たきり原因の第1位です。また脳卒中がその重要な危険因子である認知症の患者数は2010年で208万人と報告されています。
脳卒中は、大きく3つ、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の表面の太い血管が破れる「くも膜下出血」、脳の中の細い血管が破れる「脳出血」に分けられます。かつては、脳出血が圧倒的に多数を占めていましたが、最近では脳出血の主な原因である高血圧の治療薬の進歩に伴って割合が減少しています。
それにもかかわらず、脳梗塞が増加の一途をたどっています。これは、糖尿病患者や脂質異常症の患者数の増加によるものです。
最近の研究によると、糖尿病患者の血糖コントロールの指標であるHbA1cが1%上昇すると脳卒中の発症率は12%上昇すると言われています。
脳梗塞には、脳の血管や首の左右にある頸動脈の血管壁が傷ついて血栓ができる「アテローム血栓症」や、心臓に原因があって心房細動という不整脈によってできた血栓が血流にのって脳の太い血管で詰まる「心原性脳血栓症」があります。この心原性脳血栓症は、高齢者に発症率が高いものです。
ここまでお話したことをまとめると、糖尿病患者が増えたために、脳梗塞を発症してさらに寝たきりや認知症の患者数の増加にもつながっているということです。多くの皆さんが、脳梗塞になって麻痺が残ったり寝たきりになったり認知症になるのは避けたいと思っているはずです。
糖尿病を放置することで、脳梗塞やその後の生活に支障の出るリスクが高まるという関係性がお分かりいただけたと思います。