糖尿病と血管障害
-第5回 糖尿病と眼病変
年間3,000人が失明! 糖尿病網膜症
このシリーズも最終回となりました。糖尿病の3大合併症は腎症、網膜症、神経症ということはシリーズを通して何回もお話してきました。最終回となる今回は、眼病変すなわち網膜症に関してお話したいと思います。
糖尿病網膜症は、我が国では成人の中途失明原因の第1位となっています。年間約3,000人の方が失明していると言われています。前回お話した人工透析に移行する患者さんの数と比較すると多くはありませんが、失明するということは生きる質が大きく変化することは言うまでもありません。
目の奥にある網膜という組織は神経の膜で、視力を司る上で重要な役割をしています。糖尿病網膜症は、糖尿病に罹患して数年から10年以上経過して発症します。かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、「まだ目が見えるから大丈夫」という自己判断は絶対に危険です。
また残念なことに糖尿病専門医でない医師の中には、血糖のコントロール(すなわちHbA1cの値)ばかりを気にしていて患者さんに眼科受診を勧めるのを忘れてしまうということもあります。ですから、糖尿病の方はたとえ目の自覚症状がなくても、自ら定期的に眼科を受診し眼底検査を受けるようにしましょう。それが失明を防ぐ第一歩なのです。