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Come On! 糖尿病教室

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-第6回 心筋梗塞・狭心症のリスク

血糖の平均を示す「HbA1c」だけでは、動脈硬化かどうかわからない

虚血性心疾患

心臓に栄養を運んでいる冠動脈の血管が動脈硬化で細くなったり、詰まったりした結果、心臓に栄養(血液)が十分に供給できない疾患を、虚血性心疾患と呼びます。この虚血性心疾患には、狭心症と心筋梗塞があります。
 

狭心症

狭心症になると、冠動脈が細くなったり、攣縮(スパスム)して一時的に血液が流れなくなった場合に、前胸部や肩、上腹部、上肢に起こるしめつけ感があらわれます。このしめつけ感は、数分から10分程度で消失します。
労作時に発症するものは動脈の狭窄が原因で起こるものです。これに対して、冠動脈の攣縮(スパスム)が原因で起こるものは早朝明け方の寝ているときに発症し、安静時狭心症や異形狭心症とも呼ばれます。たびたび胸痛発作を起こす患者さんには、ニトログリセリンという冠動脈拡張薬が処方され、胸痛時に舌下(非常に苦い薬なので舌の下にふくませる)することで発作が和らぎます。
 

心筋梗塞

心筋梗塞は突然発症し、胸痛が持続します。
血液検査では、AST(AST-m)、LDH(LDH-1)、CK(CK-MB)などの酵素が心臓の筋肉から血中に漏れ出て、これらの数値が上昇します。
また心電図では、3本の冠動脈の支配領域に一致した部位の心電図に変化(ST波計の上昇、異常Q波)が見られます。
心エコー検査では、心筋梗塞を起こした部位に一致して、心筋の壁運動低下が見られます。
このような検査の結果、心筋梗塞と診断されると、緊急心臓カテーテル検査が行われ、詰まった血管を探して元通りに広げる治療が行われます。
 

糖尿病患者さんは、心筋梗塞になりやすい

糖尿病患者さんは糖尿病ではない人に比べて、男性では約2倍、女性では約3~4倍、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症しやすいということが多くの疫学調査で示されています。
また糖尿病に合併した動脈硬化が原因の疾患は血管の石灰化が強く、多肢病変などの重症例が多く、予後が悪いとも言われています。
 

虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の発見のため

Cさんは、狭心症のサインである胸痛がありませんでした。
このように糖尿病患者さんの場合、神経障害のために狭心症や心筋梗塞の特有の症状である胸痛がない場合があります。そのため、定期的な検査でこれらの心疾患を早期に発見する必要があります。

心電図検査は安全で簡便な検査で、繰り返し検査をしても体に害はありません。
HbA1cは血糖の平均を教えてくれる指標ですが、食後の高血糖は教えてくれません。空腹時の血糖検査ばかりではなく、食後の血糖など条件の異なる血糖検査と定期的な心臓の検査は、心筋梗塞の早期発見に繋がります。

著者プロフィール:小宮山 恭弘(糖尿病療養指導士)
1988年 行岡医学技術専門学校臨床検査科卒業。2001年より大阪鉄道病院にて糖尿病療養指導士として勤務。2015年3月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科卒業。博士(生活科学)。

 

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