Come On! 糖尿病教室
-第8回 糖尿病神経障害
糖尿病性神経障害は、なぜ起こるの? どんな症状が出るの?
高血糖は動脈硬化も進行させますが、同時にポリオール代謝異常を引き起こします。
ポリオール代謝異常によって、神経に余分な糖が沈着することにより、神経細胞を膨化させ、種々の神経障害を引き起こします。また神経栄養血管の変化により神経組織の血流低下も起こってきます。この2つの原因により神経障害が引き起こされるのです。
さて、糖尿病による高血糖で末梢神経が障害されると、左右同時に(対称性に)末梢(足の先や手の先)から神経が傷んでくるという特徴があります。
神経はいわば、電気や水道を運んでいる生活のインフラと同じように、脳からのいろいろな指令を、全身に伝える大事な部分です。この神経が障害されると、しびれや異常感覚として、針で刺すようなチクチク感、虫がはうようなムズムズ感や、火傷のようなヒリヒリした感じ、あるいは、長時間正座した時のようなジンジンした感覚、砂や小石の上を歩くようなゴロゴロしたような症状が出てきます。
また痛みを生じる場合や、感覚の低下や麻痺などが起こってきます。また神経障害の特有な症状ではないのですが、Eさんのように、ふくらはぎがつりやすい(こむら返り)を訴える患者さんも多いです。これらの神経症状は夜間に増悪することが多いのも特徴です。
ポリオール代謝異常:
ブドウ糖が細胞の中に入ると、その大部分がエネルギーとして消費され、一部はブドウ糖→ソルビトール→フルクトース(果糖)と、別の物質に変化(代謝)します。この過程をポリオール代謝経路といいます。
ブドウ糖からソルビトールに変化するとき、アルドース還元酵素の働きを受けてソルビトールに変化し細胞内に溜まります。通常の健康な人の場合はブドウ糖が少ないので問題になりませんが、糖尿病の人の場合はアルドース還元酵素に影響を及ぼすブドウ糖が多い状態ですから、ポリオール代謝も進みます。これが、ポリオール代謝異常です。高血糖によりソルビトールが細胞に蓄積されることで、細胞の機能が障害されます。