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Come On! 糖尿病教室

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-第13回 子どもの肥満と糖尿病

小児2型糖尿病は気づかれにくい

小児2型糖尿病の場合、自覚症状はまったくないか、あったとしても、本人やご家族が糖尿病のことを気にして、注意していない限り見過ごしてしまう程度のごく軽微な症状です。この点が1型糖尿病との最も大きな違いです。

小児・若年者の2型糖尿病の場合、要因はJくんのようにインスリン抵抗性が主体で、インスリンの分泌量自体は十分に保たれていることが多く、自覚症状が現れるほどの高血糖にはまずならないのです。小児2型糖尿病は、学校検尿での異常から偶然に見つかる場合が多いです。
Jくんは著しい肥満があり、たまたま風邪で尿検査と血液検査をしたことで糖尿病の発見につながりましたが、そうでなければ発症を見逃すことが多いのです。

学童を対象とした研究において、2型糖尿病の約85%で診断時の肥満度が20%を越えていたという報告があります。さらに男子の65%以上で中等度以上の肥満を認めたのに対し、女子例の約65%が非肥満あるいは軽度肥満にとどまっていました。女子は学童期から、おしゃれなどに関心が高いのに対し、男子の場合は外見を気にするようになるのが思春期以降という傾向があることや、思春期以降に身長が急激に伸びる男子では、成長期にあまり食事制限をする習慣もないことが要因となっています。

また、小児2型糖尿病患者の発見時の調査においては、50%以上の患者に2型糖尿病の家族歴が認められました。日本人を含むアジア人は、欧米人に比べてインスリン分泌量が少なく、2型糖尿病の遺伝的素因をもつ個体に、食習慣や生活習慣などの環境要因の変化が関わって、糖尿病が早期に発症する傾向があるということが推測されます。

2型糖尿病は生活習慣病ですから、太っている子どもの方が2型糖尿病になる確率がずっと高いと考えられます。また小児・若年者の2型糖尿病は、遺伝的素因が強い病気でもあり、さらに子どもの生活習慣は親の影響を受けることが少なくありません。そのため、太る、あるいは糖尿病になりやすい生活習慣が、自然に身についてしまう可能性も考えられます。従って両親や祖母・祖父に糖尿病がみられる場合、子どもが2型糖尿病を発症する可能性も高いといえます。

小児2型糖尿病の児童に対する療養指導

1.食事・運動療法が基本

●学校給食は他の児童と同じように、成長に必要な栄養の摂取
●ただし、おやつやジュースなどの清涼飲料は控える

 

2.運動制限はありません

●体育の授業はもちろん、修学旅行など課外活動には参加可能
●休日は、積極的にスポーツなど体を動かすように運動をすると、筋肉中のインスリン受容体の数が増え、活性化されインスリンの働きがよくなります。また運動による体重減少はインスリン抵抗性の改善につながります。

 

3.親への指導(保護者の糖尿病理解)が重要

●母親の糖尿病教室への参加推進
●食事指導(偏食をさけ、外食やファーストフードの摂取回数を減らす)
●ながら食い(TVを見ながらの食事、ゲームをしながらのおやつ)をやめる
●兄弟がいる場合には兄弟の協力も必要
●祖父母と暮らす場合、祖父母にも理解を求める

 

小児2型糖尿病などの生活習慣病を予防するには、日頃の子どもたちへの関わり方、休日の過ごし方など、子どもたちが将来、生活習慣病を発症しないように周囲の大人が注意することが大切です。

 

著者プロフィール:小宮山 恭弘(糖尿病療養指導士)
1988年 行岡医学技術専門学校臨床検査科卒業。2001年より大阪鉄道病院にて糖尿病療養指導士として勤務。2015年3月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科卒業。博士(生活科学)。

 

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