Come On! 糖尿病教室
-第18回 低血糖に注意! 認知症とシックデイ
低血糖と認知症の関係。高齢の糖尿病患者さんが注意したいこと
高齢者の糖尿病患者さんでは、糖尿病でない方に比べ2~4倍、認知症の発症リスクが高いことがわかっています。
また、認知症の要因としては、従来は高血糖によって起こる血管障害による、脳血管性認知症が多いとされてきましたが、最近の研究では、脳血管性型認知症よりもアルツハイマー型認知症が多いと報告されています。これは一見すると、“高血糖が原因の脳血管性認知症よりそうでないアルツハイマー型の方が多いということだから、糖尿病患者にとっては安心材料”のようにも思えますが、そうではありません。
インスリンは、血液脳関門を通って脳内に入り、脳内に分布するインスリン受容体に結合します。このインスリン受容体の分布する脳内は、記憶や学習といった重要な機能を担っているため、アルツハイマー型認知症の発症に深く関連していると考えられているのです。
特にインスリン分泌を促進するSU薬を服用している高齢者の場合、あまりに厳格な血糖コントロールをしすぎると、認知機能を低下させることにつながります。
熊本宣言では「HbA1cの値を7%以下にしましょう」という、Keep 7% が提唱されています。これは糖尿病合併症の進行を抑制するには望ましい値なのですが、高齢の糖尿病患者さんにとっては必ずしもあてはまりません。
低血糖状態は、脳に必要な栄養の糖分が不足した状態ですので、認知症発症を早めてしまう恐れがあります。そもそも高齢者の場合、低血糖になっても低血糖症状がでにくいことに加え、睡眠中(夜間に)無自覚低血糖を起こしていることもあります。
糖尿病患者さんの血糖コントロールが良好なのはいいことですが、高齢の糖尿病患者さんの場合は、認知症のリスクという点で周囲の人は注意を払うことが大切です。
薬の飲み忘れが多いようだ、最近容姿に変化が出てきた(汚れている服を着ている、裏返った服をそのまま着ている)、同じものをたくさん何度も買ってくるなど、認知症の傾向が見られたら早めに専門の医師に相談しましょう。