Come On! 糖尿病教室
-第18回 低血糖に注意! 認知症とシックデイ
食べていないのに血糖値が急上昇! シックデイに注意
シックデイとは、“Sick day”の直訳「病気の日」の通り、糖尿病患者さんが(糖尿病以外の)病気になってしまうことです。例えば風邪をひくと、発熱や嘔吐、食欲がなくなるということがありますが、何が問題かというと、シックデイのときは血糖コントロールが悪化するということです。
糖尿病患者さんの多くは、食事を摂ると血糖値が上がり、食べなければ上がらない、またインスリン療法を行う患者さんも、食事を摂らずにインスリン注射を打つと低血糖になってしまうと考えていると思います(このコラムでも、そのように説明しています)。
ところが、シックデイのときは、低血糖になるどころか血糖値が急上昇してしまうのです。
風邪や感染症など病気にかかること、発熱、下痢、嘔吐、痛み。こうしたものはすべて体にとってストレスです。ストレスがかかると、それに対抗するため、交感神経系の働きが優勢になります。交感神経系が働くと、インスリン拮抗ホルモンの分泌量が増え、血糖値を上昇させます。
また、炎症によりサイトカインというたんぱく質も増加します。サイトカインにはインスリンの分泌を抑えたり、インスリンの抵抗性を高めたりする働きがあるため、血糖値が上がるのです。
こうしたことから、体調が悪くて何も食べていないのに、低血糖になるどころか血糖値が上昇するということが起こるのです。特に38度以上の高熱が続いたときや、下痢や嘔吐などの消化器症状があると、脱水が急速に進行します。脱水症状は、体に必要なミネラルや水分が不足するばかりか、血中の水分も少なくなって血液が濃くなるため、血糖値の急上昇にもつながるのです。
ですからインスリン療法中の方は、特にご注意ください。シックデイで食事が摂れないからといって、インスリン注射を勝手に中断してしまうと、ケトアシドーシス(血液が酸性に傾き、昏睡やショック状態に陥る)を起こしかねませんので、自己判断は大変危険です。