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Come On! 糖尿病教室

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-第25回 内臓脂肪より悪い!? 異所性脂肪

異所性脂肪は、内臓脂肪よりもやっかい!

最近の研究で、2型糖尿病患者のすい臓には、すい臓内の脂肪沈着が非糖尿病の人に比べて多いということがわかってきました。すい臓への脂肪蓄積は、脂肪肝同様に「脂肪膵」と呼ばれます。

文字だけだと臓器が異なるだけで同じ状態をイメージすると思いますが、これらは脂肪滴の存在形態が異なります。脂肪肝が肝細胞内に脂肪滴が蓄積するのに対して、脂肪膵の場合は細胞間質に脂肪細胞が沈着します。脂肪膵は、腺房細胞やランゲルハンス島以外の小葉間質に起こり、脂肪肝のように肝細胞内に脂肪滴を蓄えた状態ではありません。すい臓の脂肪浸潤は、病理組織標本で見てみると、細胞外間質への脂肪組織の増加によるものであることがわかります。

内臓脂肪の肥満が血圧異常や脂質代謝異常、糖尿病の発症の原因ともなる耐糖能異常を引き起こすことから、内臓脂肪の肥満はメタボリックシンドロームの診断基準の必須項目でもあります。
内臓脂肪蓄積はインスリン抵抗性を高め、糖尿病発症に影響しますので、脂肪と言えば内臓脂肪が最も悪い脂肪として注目されがちですが、メタボリックシンドロームの人が全員、糖尿病を発症するわけではありません。メタボリックシンドロームで認められるインスリン抵抗性に、遺伝的、体質的なインスリン分泌低下が起こったときに、はじめて糖尿病を発症します。

異所性細胞が内臓脂肪よりやっかいなのは、肝臓やすい臓に蓄積されることです。中性脂肪が内臓脂肪として蓄積しきれないほど増加した結果起こるのが、異所性脂肪が肝臓やすい臓に蓄積された脂肪肝や脂肪膵の状態です。脂肪肝や脂肪膵は、インスリン抵抗性を高め、結果起こる高インスリン血症は、心筋梗塞などの大血管疾患のリスクになります。
人間ドックで脂肪肝と言われた場合、すい臓にも脂肪が蓄積した脂肪膵を合併している可能性が高いので要注意です。

実は、異所性脂肪のすい臓への蓄積がインスリン分泌へ及ぼす影響やインスリン抵抗性を高める機序は、まだ明らかになっていません。しかし最新の研究では、耐糖能の低下が認められ、血糖値の上昇がない時期でも既にすい臓への脂肪沈着は始まっていること、さらに中性脂肪や遊離脂肪酸の増加が認められ、血糖値上昇以前に、脂質代謝異常が起こっていることが報告されています。今後これらの機序の解明が待たれています。

 

 

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