Come On! 糖尿病教室
-第25回 内臓脂肪より悪い!? 異所性脂肪
中性脂肪が増えると、遊離脂肪酸も増える
遊離脂肪酸は、中性脂肪を構成する成分です。中性脂肪は、「遊離脂肪酸」と「グリセロ-ル」という脂質成分からできています。体内の脂質代謝において、肝臓で必要に応じて合成されたり分解されたりしています。
中性脂肪から放出された遊離脂肪酸は、全身のインスリンの感受性に影響する臓器に取り込まれ、インスリン抵抗性を高めます(脂肪毒性)。また、肝臓の栄養血管である門脈から遊離脂肪酸が直接肝臓に流入すると、脂肪合成や糖新生が亢進し、インスリン抵抗性を引き起こします(糖毒性)。
このインスリン抵抗性による脂肪毒性と糖毒性は互いを悪化させる関係にあり、慢性的に増加した遊離脂肪酸は、すい臓のβ細胞機能を低下させます。
また、遊離脂肪酸がすいβ細胞の脂肪酸受容体に作用して、グルコースの応答性やインスリン分泌を刺激する一方で、すいβ細胞内あるいはすいβ細胞の周囲に蓄積した脂肪が小胞体ストレスとなってβ細胞のアポトーシス(細胞死)を促進することも知られています。
異所性脂肪や遊離脂肪酸の増加を防ぐには、まずバランスのとれた食生活と適度な運動の継続が必要となります。また体の状態を知るには、定期的な検査も必要です。
糖尿病は、美味しいものを我慢していやな運動をしなきゃならないつらい病気であると考えずに、上手に付き合えば、糖尿病ではない人と同じように、元気で長生きできる病気と考えてみてください。糖尿病療養指導士は、皆さんがご自身でできることからコツコツ続けていけるよういつも応援しています。
著者プロフィール:小宮山 恭弘(糖尿病療養指導士)
1988年 行岡医学技術専門学校臨床検査科卒業。2001年より大阪鉄道病院にて糖尿病療養指導士として勤務。2015年3月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科卒業。博士(生活科学)。