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糖尿病の治療薬

-第5回 α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬)

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI薬)の特徴と副作用は?

現在、国内において販売されているα-GI薬は、アカルボース(グルコバイ®)、ボグリボース(ベイスン®)、ミグリトール(セイブル®)の3種類です。

α-GI薬は「空腹時の血糖値はそれほど高くはないけれど食後に急激に血糖値が上昇する」という糖尿病の方に用いられます。また、「SU薬などの他の糖尿病治療薬を使用して空腹時の血糖値は改善されているのに、食後の高血糖が改善されない」という患者さんにも併用薬として使われます。

2009年10月、ボグリボース(ベイスン®)に、糖尿病の食後過血糖の治療だけでなく、まだ糖尿病と診断されていない境界型である耐糖能異常(IGT)、いわゆる糖尿病予備軍の方の発症予防にも効果があることが、日本人を対象とした臨床試験(治験)で初めて認められ、厚生労働省に承認されました。

これは、国内で初めて耐糖能異常(IGT)に対する治療薬として認められたということです。食後過血糖は、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の危険因子としても注目されていますし、いかに耐糖能異常(IGT)を早期に発見し、積極的に治療することが重要であるかが伺えます。

さてここで、α-GI薬の副作用について説明しましょう。
冒頭に記載しましたが、α-GI薬は、直接インスリン分泌を促進して血糖値を下げる作用はありません。ですから、一般的に糖尿病治療薬の副作用として懸念される血糖値が下がりすぎることによる「低血糖症状」の発現は、α-GI薬の単独服用では低いと考えられています。

しかし、SU薬などの他の糖尿病治療薬と併用する場合には、低血糖症状が発現することがありますので、その場合は、必ず単糖類である「ブドウ糖」をとる必要があります。α-GI薬の作用の特性上、ブドウ糖以外の糖ではすぐに血糖値が上がらず、症状の回復が遅れてしまうからです。

そのほかにα-GI薬の副作用で多く認められる症状は、「腹部膨満感(お腹が張る感じ)」、「放屁(おなら)」、「下痢」、「腹鳴(お腹が鳴る)」などの消化器症状です。その発生メカニズムは、小腸で吸収しきれなかった糖質が大腸に達し、腸内細菌により発酵されることによって、炭酸ガスや水素ガスが発生し、酢酸、酪酸、乳酸などの有機酸になり腹部膨満感や放屁(おなら)といった症状が発生するとされています。

つまり、消化器症状の副作用は、α-GI薬の作用メカニズムと大きく相関しており、α-GI薬の食後過血糖の改善効果が強いほど、消化器症状は強く発生するといった皮肉な関係にあるのです。

以上、α-GI薬について説明いたしましたが、糖質の種類や消化吸収の過程を知ることで、α-GI薬の作用がよくご理解いただけたのではないかと思います。また、ボグリボース(ベイスン®)が耐糖能異常(IGT)の治療薬として承認取得されたことにより、食後過血糖改善の重要性の認識が高まり、糖尿病治療の考え方に変化をもたらすと考えられ、今後ますます注目されるお薬になるのではないかと予測されます。

5回にわたり、経口糖尿病薬の種類や特徴を詳しく説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。今後も引き続き、糖尿病薬に関する情報を提供していきますので、どうぞご期待ください。

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

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