糖尿病の治療薬
-第18回 糖尿病治療薬の飲み合わせ-その4
タバコが体へ与える影響、3大有害物質
今回は、糖尿病治療薬とタバコの相互作用についてお話ししていきたいと思います。
タバコは「百害あって一利なし」と言われるほど、体に良くないということは皆さんもご存知だと思います。では、良くない影響とは一体どのようなものでしょう。薬とタバコの相互作用の話に入る前に、まずは体へのタバコの影響について触れてみたいと思います。
タバコの煙には、4,000 種以上の化学物質が含まれています。そしてこのうちの200種類以上が、発がん性物質などの有害物質であると言われています。
その中でも代表的なのが、「ニコチン」「一酸化炭素」「タール」の3つです。
ニコチン
ニコチンは、喫煙によってその大半が肺から吸収されて血液中に入り、各臓器に運ばれていきます。ニコチンは吸収が速く、わずか数秒で肺から脳まで到達すると言われています。
ニコチンは、主に中枢神経系・末梢神経系・心血管系・消化器系・外分泌腺に影響を及ぼして、さまざまな作用・症状を引き起こします。一番の特徴は、中枢神経系に作用することによって、なかなかタバコが止められない、いわゆる「ニコチン依存症」に陥ることです。
特に糖尿病においては、心血管系の作用が問題です。
ニコチンによって自律神経が刺激されることで血管が収縮し、血圧が上昇します。このため心臓に負担がかかるほか、血管が収縮することによって、血液の流れが悪くなり、糖尿病の重大な合併症のひとつである動脈硬化を引き起こします。
さらには、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患といった、生命にかかわる重大な病気を招くことになります。
一酸化炭素
一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと結合する性質があり、その結合力は酸素の200倍以上とも言われています。通常、肺から吸い込まれた酸素はヘモグロビンと結合して赤血球によって全身の細胞に運ばれますが、喫煙によって一酸化炭素が体内に入ると、ヘモグロビンと酸素が結合するより先に一酸化炭素と結合してしまい、赤血球の酸素運搬能力が低下します。
これがいわゆる「一酸化炭素中毒」で、全身の細胞が酸欠の状態です。一酸化炭素と結合したヘモグロビンは、血管壁を傷つけ、傷ついた部分にコレステロールが引っ掛かりやすくなります。そして血管内にコレステロールが沈着した結果、動脈壁内の組織が局部的に壊死し、硬化してしまいます。
特に糖尿病にとっては、一酸化炭素によって動脈硬化が進みやすくなるのに加えて、前述のニコチンの作用によって血管が収縮して血液の流れがさらに悪くなるという、ダブルパンチの最悪な状況になります。
タール
タールは、一般に「ヤニ」と呼ばれている物質で、肺や歯の裏を黒くする主成分です。タバコのフィルターに茶色く付着するのが、まさにタールです。
タールの中には、発がん性物質が60種類以上も含まれ、これらが喉頭がんや肺がん・気管支炎・肺気腫などの原因になります。また、口やのどの粘膜についたタールは、唾液と一緒に食道や胃に運ばれるため、食道がんや胃がんの最大の原因のひとつであるとも考えられています。
これら3大有害物質のみならず、実に200種類以上もの有害物質がタバコの煙に含まれているわけです。喫煙することで、わざわざ体に有害物質を取り込んでいることを考えると、ぞっとしませんか。
そもそも、健康な人の血液がサラっとした状態なのに対して、糖尿病の方の血液は血液中にブドウ糖が多い分、ドロっとした血液の流れが悪い状態にあります。
その悪い状態での喫煙行為によって、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な合併症を引き起こす危険性は格段に跳ね上がります。