糖尿病の治療薬
-第17回 糖尿病治療薬の飲み合わせ-その3
糖尿病とアルコールの関係
今回も引き続き、糖尿病治療薬と嗜好品との相互作用についてお話ししていきたいと思います。
前回は嗜好品の中でもアルコールに注目し、糖尿病治療薬とアルコールの相互作用についてお話しました。
今回は、糖尿病という疾患そのものとアルコールとの相性について触れ、また、アルコール以外の飲料と糖尿病治療薬との相互作用についてもお話ししていきたいと思います。
アルコールは、糖尿病治療薬の服用の有無にかかわらず、次のような理由より、糖尿病そのものとの相性が悪いと言えます。
インスリン分泌を悪化させる
アルコールが体内で分解されてできるアセトアルデヒドなどが、インスリンの分泌を悪化させます。また、アルコールそのものがインスリンを分泌するすい臓のβ(ベータ)細胞を壊してしまいます。
これらが糖尿病の方が飲酒をしない方がよいと言われる大きな理由です。
血流を悪化させる
お酒を飲んでトイレが近くなるという経験があると思います。アルコールは利尿作用がとても強いため、飲み過ぎると、脱水症状を引き起こします。
脱水症状により体内の水分が失われると、血流が悪化してさまざまな合併症を引き起こしてしまいます。
低血糖を起こす
食事を十分に摂らずにお酒を飲むと低血糖になります。
これは、食事摂取不足によりエネルギーの貯蔵庫である肝臓のグリコーゲンが減少していることに加えて、糖新生が抑制されるためです。
また、経口糖尿病治療薬やインスリン注射などでの薬物治療中でのアルコール摂取は、さらに低血糖を来たしやすいため、食事を摂らずにお酒を飲むことは厳禁です。
肥満につながる
アルコールが肝臓で分解されるとき、脂肪の合成を進める酵素が活性化されて中性脂肪の合成を進行させます。これが、アルコール摂取が肥満につながると言われる理由です。肥満であること自体が糖尿病の原因であるだけでなく、糖尿病を進行させて合併症を引き起こしますので、肥満につながるアルコールの摂りすぎには注意が必要です。
高カロリー
炭水化物(糖分)とたんぱく質が1gあたり4Kcalであるのに対して、アルコールは1gあたり7Kcalものカロリーがあります(ちなみに脂肪は1gあたり9Kcalです)。
しかも、アルコールはただカロリーがあるだけで、栄養素がありません。ご飯の代わりにお酒でカロリー摂取なんてお考えの方もいるかもしれませんが、それでは栄養バランスを崩してしまいますので適切ではないでしょう。
胃粘膜を刺激し、食欲を増進させる
お酒を飲むと、つい食べ過ぎてしまいますよね。これは、アルコールが胃粘膜を刺激し、胃酸が分泌されるため。糖尿病治療の基本である食事療法で指示された摂取カロリーを守れなくなるおそれがあります。