ログインするとすべての記事が読めます

糖尿病の治療薬

-第17回 糖尿病治療薬の飲み合わせ-その3

その他の飲み物との薬物相互作用

薬は水や白湯で飲むのが一般的ですが、ペットボトルのお茶があったからそれで飲んでしまった、というようなことはありませんか?

もし、お茶やコーヒー、牛乳、ジュースなどと一緒に糖尿病治療薬を飲んだら、どう影響するのでしょう。

結論から言うと、現時点では、経口剤の糖尿病治療薬との明らかな薬物相互作用が認められた報告はまだないようです。
けれども、糖尿病治療の基本である食事療法の観点からは、カロリーのある飲み物は制限されていますし、糖尿病治療薬を糖分が含まれる飲み物で服用するということは、明らかに不合理ですので、飲み合わせとして現実的ではないでしょう。

糖尿病治療薬との相互作用からは少しそれますが、ここで一般的な飲料と薬の飲み合わせとして問題視されているものを見てみましょう。
 

お茶やコーヒーなどのカフェイン含有飲料

100mLあたりのカフェイン含有量は、煎茶で約20mg、ウーロン茶で約20mg、紅茶で約30mg、コーヒーで約60mg、玉露はぐっと増えて約160mgです。

医薬品としてのカフェインの常用量は、「1回100~300mgを1日2~3回」とされています。この量を超えるような多量のカフェイン含有飲料で薬を飲むと、薬の代謝や排泄は遅くなります。

特に注意したいのは、喘息治療薬のキサンチン系薬剤やうつ病の治療薬として処方される中枢神経興奮薬です。これらは、カフェイン含有飲料によって薬の作用が増強されることがあります。これらの薬を服用中の場合は、カフェイン含有飲料は控えるほうが望ましいでしょう。
 

牛乳

牛乳と一緒に飲むと、カルシウムと反応して薬の成分が吸収されず、効果が現れにくくなるのが、細菌による感染症などで処方されるテトラサイクリン系の抗生物質やニューキノロン系の抗菌剤です。牛乳だけでなくカルシウムの多い乳製品には注意が必要です。

また、難溶性薬剤である水虫治療薬のグリセオフルビンの場合は、牛乳の脂肪分によって溶解性が向上して吸収が促進され、血液中の薬物濃度が上昇します。そのため薬の作用が強く現れ、副作用が出やすくなります。

さらに、腸溶性製剤(胃で溶けず、腸に到達してから溶けるようにコーティングされている)を服用するときも注意が必要です。
牛乳と一緒に飲むと、胃酸の酸性度が低下して薬のコーティングが胃の中で溶け始めてしまい、腸で溶ける特性が失われてしまうからです。

逆に、解熱鎮痛薬などの胃に障害を与える可能性のある薬を空腹時に飲む場合は、牛乳に含まれる脂肪やたんぱく質が胃を保護するという利点がありますので、胃の負担を軽くするために勧められる場合もあります。
 

ジュース

ジュースの中で特に注意が必要なのは、グレープフルーツジュースです。

幸いにして、糖尿病治療薬とグレープフルーツジュースとの相互作用はまだ事例として挙がっていませんが、高血圧の治療薬では、ジヒドロピリジン系のカルシウム(Ca)拮抗薬との相互作用が知られています。

グレープフルーツジュースに含まれているフラノクマリンという物質が、Ca拮抗薬を分解する薬物代謝酵素の働きを阻害し、薬の成分の血液中濃度が上昇します。そのため薬の作用が強く現れて、副作用が発現する可能性があり、過度な血圧低下を引き起こすという不測の事態を招きやすくなります。
これはグレープフルーツそのものでも同様ですので注意しましょう。

さて、こういった細かい注意事項をすべて覚えていられるかというと、なかなか難しいですよね。ですから、お薬を服用するのに最も望ましい飲み物は「水か白湯」と言われるわけです。

急いでいるときなど、つい手近にあるお茶やジュースで薬を飲んでしまうこともあるかもしれませんが、「薬の中には絶対に一緒に飲んではいけないものもある」ことをまず認識しましょう。そして、必ず主治医や薬剤師の服薬指導を守って薬を服用してください。

次回は、嗜好品の代表格、タバコとの相互作用について見ていきたいと思います。

 

著者プロフィール:木元 隆之(薬剤師)
1998年インクロムの提携医療機関に入職。約7年の治験コーディネーター(CRC)の経験を経て、現在、治験事務局長を務める。

 

前へ 1 2

教えて!薬剤師さん

「健康コラム」をもっと見る

新着健康コラム

「新着健康コラム」をもっと見る