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糖尿病のあれこれ

-第1回 糖尿病と歴史

飽食のローマ人、平安貴族も糖尿病?

糖尿病は、実は、非常に古くから存在が知られた病気です。
約2000年前のローマの書物によると、

・尿に手や足などが溶け出す
・腎臓と膀胱がやられる
・水道のように尿が出る
・異常にのどが渇き、飲む以上に尿が出る
・水を飲まないと体がひからびて死に至る
・病気は、長い時間をかけて悪くなる
・症状が出ると患者は短命である
 

などの恐い記述がたくさん書かれています。

“手や足が溶け出す”という表現は、蛋白や糖分などの体の成分が出るという意味ですし、慢性病で、腎臓を障害し、口渇、多飲、多尿など、現代の医学書に出てくる記述と内容はそれほど変わりません。昔の人の観察力には恐れ入りますが、現代でも、放置して全く治療をしないと、同じ結果がもたらされます。さすがにこんなに多くのひどい症状をかかえても病院にかからない人は、情報が発達し、治療法が確立している今、ほとんどおられないと思いますが。

日本で記録上の最古の糖尿病患者は、“鳴くよ、うぐいす、平安京(794年)”で有名な平安時代の後半に栄えた貴族の藤原道長であると言われています。

藤原道長の症状は、約1000年前の“小右記”という記録に

・のどが渇いて水を多量に飲む
・身体が痩せて、体力が無くなった
・目が見えなくなった
 

と書かれています。

糖尿病にも、原因がいろいろありますから、道長がどういった原因で発症したのかは、知る由もありませんが、都合のいい推測をしてみます。
平安時代は、まだ武士が権力を握る前の、優雅な貴族の時代であり、一部の権力者のみが、豊かな生活を送っていた頃です。道長も、普段から豊かな食生活を送っていたでしょうし、それが病気を悪化させたと思われます。武士ではありませんから、運動量も少なかったでしょう。体調が悪くなってからも、栄養をつけるために同じ様な食事を続けていたかもしれません。権力を維持するために、多大なストレスをかかえていて、それも病気に影響した可能性もあります。

でも、糖尿病には、血液の糖分を細胞に取り込んで、血糖値を下げるインスリンというホルモンが絶対的に不足するタイプもあります。そういった患者さんに対しては、当初からインスリン注射を行わなくてはいけません。道長には、飽食とイメージがありますが、もしかしたらそういったタイプの糖尿病であったのかもしれません。

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