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糖尿病のあれこれ

-第2回 肥満だけが原因じゃない

肥満だけが原因じゃない

次に、糖尿病と診断された後の事を考えてみましょう。
やはり食べ過ぎや肥満で糖尿病を発症した場合は、食生活の改善や体重を減らすことによって、病気が良くなる可能性が高いです。これは、原因が過食や体重増加にあるのですから、当然ですね。

糖尿病と診断された時には血糖値が驚くほど高かったけれど、頑張って糖尿病と向き合い、数ヵ月後には薬なしでもすっかり正常値に戻ってしまったという方々を何人も診てきました。「検査結果は正常でしたよ」とお伝えした時の患者さんの笑顔は、今でも忘れられません。

では、過食や体重増加が原因でない場合はどうでしょう。

高齢の糖尿病患者の多くは、食事量も決して多くなく、脂質をたくさん摂るわけでもなく、体重も標準に近いので、やはり運動と薬物療法が基本になります。運動は、糖尿病に対してだけではなく、高血圧や骨粗鬆症など、高齢者に多い病気に対しても良い効果があります。

薬物療法は、血糖値や合併症によって様々ですから、ここで合併症というものを考える必要があります。まだ脳梗塞や心筋梗塞、狭心症、網膜症、腎不全、閉塞性動脈硬化症などのいわゆる糖尿病合併症を有していない場合でも、検査をしてその予兆を知ることで、将来の合併症の発症を予防したり、発症しても早期に治療できたり、より厳格に血糖値を下げたりすることが可能です。

検査項目は、例えば尿からでるタンパクや心電図変化、網膜の初期病変、首の頸動脈内の肥厚や動脈硬化などです。これらの項目は、比較的簡単な検査で異常を知ることができますし、その異常に応じた、個々の糖尿病治療、いわゆるテーラーメード治療を行うことができます。

中高年の方にかぎらず、若くして糖尿病を発症した方にも、血糖値だけでなくこれらの検査について十分に知っていただきたいです。こういった検査を受けて治療に幅をもたせることが糖尿病の治療には重要ですから。

 
著者プロフィール:石川一彦(医師)
1992年大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部附属病院、国立大阪病院、国立循環器病センター勤務、米国Yale大学留学等を経て、2005年より医療法人平心会 大阪治験病院に勤務。森ノ宮医療大学客員教授。専門分野は循環器内科、総合内科。
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